研究課題/領域番号 |
20K21746
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
原 正之 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00596497)
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研究分担者 |
菅田 陽怜 大分大学, 福祉健康科学部, 講師 (30721500)
大鶴 直史 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (50586542)
大西 秀明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (90339953)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | コグネティクス / 脳磁図 / ハプティクス / ロボティクス / ニューロリハビリテーション |
研究実績の概要 |
本研究課題は,「脳磁図(MEG)計測環境には,アーティファクトとなり得る金属部材や電気機器を持ち込むことができない」という固定観念を壊して,MEG計測環境下で使用可能なハプティックデバイス(触力覚提示装置)を開発し,新しいニューロリハビリテーションを可能にすることに挑戦するものである.
2020年度の研究では,MEG環境で使用するアクチュエーションシステムの設計・試作に主眼を当てて研究を行った.まずMEG環境に金属部材を持ち込み,様々な条件で金属部材を動かしてMEG計測にどのような影響を及ぼすかを検証した.その結果,強磁性体ボックス内で金属部材を動かした場合には,MEG計測に対してほとんど影響を及ぼさないことを確認した.次に強磁性体材料を用いた磁気シールドについて, 強磁性体ボックスの厚みや層数などを様々に変えて磁気シールド率のシミュレーションを行い,そのシールド効果について検証を行った.また強磁性体ボックス内でサーボモータを駆動させ,その際に強磁性体ボックス越しにサーボモータが発する磁場の強さをガウスメータにより計測し,磁気シールドの実用的な条件を求めた.これらの結果をもとに,強磁性体ボックスに電磁モータや超音波モータ,ペルチェ素子などを組み込んだシールドアクチュエーションシステムの試作を行った.さらには,実環境において試作装置の基本性能・特性の評価を行い,2021年度に実施予定のMEG対応性試験の準備を整えた.
また,2020年度には研究分担者との打ち合わせやMEG環境下での予備実験などを予定していたが,コロナ禍で出張が困難であったため,メールやZoomなどを用いた遠隔での打ち合わせにシフトし,2021年度に向けての議論を定期的に行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は,主にMEG対応シールドアクチュエーションシステムの設計・試作に主眼を置いて研究を推進した.これまでに,シミュレーションと実験の両方で強磁性体ボックスのシールド効果について確認しており,その知見を基礎として,一般的なアクチュエータ(電磁モータなど)を強磁性体ボックスに組み込んだいくつかのシールドアクチュエーションシステムの試作と性能評価を終えている.また,研究分担者と定期的にZoomミーティングを行うことによって,試作機の駆動条件の決定やMEG対応性試験のプロトコル策定を行うなどMEG対応試験に対する準備を整えた他,ヒトの運動学習に関する新しい研究課題の設定・提案なども行っており,コロナ禍で実験や出張に対する制限があったものの,MEG対応ハプティックデバイスの開発に向けた取り組みがそれなりにできたものと言える.
以上のことから,全体として本研究課題は研究計画に従っておおむね順調に進展しているものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として,2021年度からは実際に研究分担者の所属機関の関連施設にあるMEGを用いて,これまでに開発したシールドアクチュエーションシステムのMEG対応試験を行っていく.MEG対応試験については,過去の研究で行ったMRI対応試験の内容を基礎として策定した実験プロトコルを用いた駆動実験を行うことを計画する.具体的には,試作したシールドアクチュエーションシステムをMEG環境に入れる前の計測データをベースラインとして,電源(アンプ)をOFF/ONにした場合やアクチュエータを駆動した場合に計測したデータとの比較を行い,ノイズレベルについて比較・議論を行う.また,配置や駆動速度なども様々に変更して,デバイス駆動がMEG計測に与える影響を多角的に検証する.2021年度も新型コロナウイルス感染症感染拡大防止により研究が制限されることが予想されるので,開発したシールドアクチュエーションシステムシステムや制御PCなどをMEG施設に送り,現地の研究分担者とともに遠隔で実験を実施することも視野に入れて研究を進める.
最終的には,上述のMEG対応試験結果を基礎として,MEG対応ハプティックデバイス(例えば,力覚提示装置や温感提示装置)の試作を行う.さらには,試作したハプティックデバイスを運動学習実験などに組み込むことで,ニューロリハビリテーションに対する有効性や適用性について検証することも考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は,研究分担者の所属する機関(新潟医療福祉大学と大分大学)を訪問して,研究に関する打ち合わせやパイロット実験を行う予定であったが,緊急事態宣言や新型コロナウイルス感染症対策により,すべての出張を中止・延期せざるを得なくなった.このため,出張旅費や人件費等を次年度に繰り越す必要が生じた.
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