研究課題/領域番号 |
20K21749
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
増田 和実 金沢大学, 人間科学系, 教授 (50323283)
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研究分担者 |
芝口 翼 金沢大学, GS教育系, 助教 (40785953)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 運動 / エピジェネティクス / 記憶 / 骨格筋 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
骨格筋には筋記憶と称される機能があり、一定期間のトレーニングの中断を挟んだとしても、それを再開すれば容易に運動効果を取り戻すことができる。筋記憶には筋核やエピジェネティクスな制御が関係すると示唆されているが、筋代謝の要であるミトコンドリア(Mito)の適応にもこうした記憶性が生じるのか否かは明らかになっていない。ミ 本年度の計画では、筋核の増加を促せるモデル検証と構築を図ることとした。in vivoでは筋核のみを増加させることは不可能なため、レジスタンストレーニング(R-Tr.)模擬モデルによって筋肥大と一緒に筋核増加を引き起こす必要がある。そこで本研究ではハシゴ登り運動を取り上げ、その効果について検討した。8週齢のWistar系雄性ラットを用いた。R-Tr.には独自で製作したラダーを用いた。R-Tr.群にそれぞれ6週間のラダークライミングTr(30%-1RMの負荷から、2回目以降の負荷を漸増, 5回のクライミング×3セット(あるいは疲労困憊), 週3.5回)を課した。脱R-Tr.群にはTr後に6週間の脱Tr期間を設けた。被験筋には足底筋を使用し、相対筋重量を求めた。足底筋の相対筋重量は16%の有意な上昇を、CSA/Body Weightも有意な増加を示した。また、免疫組織学的手法によって筋線維横断面積や筋核数を算出した。筋核数はR-Tr.に伴って増加傾向を示し、脱R-Tr.によって有意に増加した。リアルタイムPCR法によって評価したMito DNA数はR-Tr.によって増加傾向を示した。今後、同じ筋サンプルからウエスタンブロッティング法によってMito関連タンパク質量およびヒストンタンパク質の検証を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症拡大によって本学における研究教育活動が自粛・一部停止となり、最低限度のラボワークを進める中で、なかなか研究計画を推進することが難しかった。しかし、その中でも実験動物用のレジスタンストレーニングモデル(ハシゴ登り運動)について検証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では、令和2年度の検証課題を追加分析しながら、そこで確立したR-Tr.モデルの効果を詳細に解析する。また、R-Tr.モデルに加えて、持久走Tr.(E-Tr.)を課す群を設け、それらのTr.効果について比較検証を行う(E-Tr.はMito量を増やすモデル)。各Tr.を課した後、6~8週間の脱Tr.を経て、再びTr.を課す(R-Tr.とE-Tr.の組み合わせによって筋核ドメインの変化が代謝に関わるMitoタンパク質の合成量を変える可能性を検証)。筋形態や筋核数(Histochem)、mitDNA数(PCR: Mito量の指標)、Mitoタンパク質発現(WB)、Mito呼吸活性(O2k)等を分析し、筋記憶と称される現象(表現型)の確認と、その背景にあるMito関連タンパク質量およびヒストン修飾(H3K27ac, H3K36ac, H3K79me3)タンパク質の検証を進める予定である。
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