研究課題/領域番号 |
20K21753
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大内 乗有 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (00595514)
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研究分担者 |
大橋 浩二 名古屋大学, 医学系研究科, 特任准教授 (10595515)
竹藤 幹人 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20709117)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 持久性運動 / microRNA / 心腎血管疾患 |
研究実績の概要 |
本研究では、持久性運動により制御される骨格筋由来の分泌型microRNA(分泌型myomiRNA)の探索と同定を行い、分泌型myomiRNAの心腎血管疾患における生理病態学的意義を解析することにより、運動療法による心腎血管保護作用の機序解明のみならず、心血管病と腎臓病などの生活習慣病の疾患制御機構の解明と創薬を含む予防・治療戦略の開発につなげることを目的としている。現時点で以下のような実験の結果を得ている。 1.マウス持久性運動(トレッドミル運動)モデルを用いて、運動群と非運動群の骨格筋におけるmicroRNAのプロファイルをRNAシークエンス解析により比較検討した。 2.骨格筋において持久性運動によって発現増加を示すmicroRNAをスクリーニングした。血液よりエクソソームを単離し、スクリーニング後のmicroRNAをPCR法にて定量した。運動により、骨格筋とエクソソーム中で発現増加を示すmicroRNAを、運動誘発性「分泌型myomiRNA」と考えた。それらの中で、心腎血管系への効果がほとんど報告されていない分泌型myomiRNAを候補として選別した。 3.いくつかの分泌型myomiRNA の中で、microRNA mimicを用いた検討にて腎近位尿細管上皮細胞でのTGFbeta誘導性のコラーゲンI産生や上皮間葉移行を抑制する分泌型myomiRNAを見出した。野生型マウスの腎障害モデルにおいて、この分泌型myomiRNAのmimicの投与は腎線維化を抑制した。この分泌型myomiRNAの腎保護に関わる分子やシグナル伝達経路を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点では、マウス持久性運動モデルを用いて、運動により発現増加を示し、心腎血管系における機能があまり解析されていない分泌型myomiRNAのスクリーニングを行った。その結果、運動誘発性分泌型myomiRNA候補を選び出した。microRNA mimicを用いた解析において、腎近位尿細管上皮細胞でのコラーゲン産生抑制と上皮間葉移行抑制に関わる、分泌型myomiRNA候補を見出した。また、この分泌型myomiRNAはマウス腎障害モデルにおいて腎線維化を抑制した。しかし、この分泌型myomiRNAの腎保護作用の再現性の確認に予想以上に時間を要した。現在、腎臓保護に関する分子機序を解析中である。これらの達成度は当初の研究計画の予定を考えるとやや遅延していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
心腎血管系に作用する運動誘発性分泌型myomiRNAの同定と心腎血管疾患における運動誘発性分泌型myomiRNAの役割を明らかにするため、前年度までの研究成果を踏まえて、以下の解析を行う。 1.前年度に、運動により発現変化を示す分泌型myomiRNAのスクリーニングを行い、腎近位尿細管上皮細胞でのコラーゲン産生と上皮間葉移行の抑制に関わる運動誘発性分泌型myomiRNA候補を発見した。また、この分泌型myomiRNAは腎障害モデルにおいて腎線維化を抑制した。今後は、この分泌型myomiRNAの腎保護作用についての分子機序を解明する。 2. マウストレッドミル運動モデルを用いて、運動誘発性分泌型myomiRNAのスクリーニングを継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
我々が発見した運動誘発性分泌型myomiRNAが多彩な腎臓保護作用を示す可能性と様々な機序で作用を示す可能性があり、再現性の実験が必要となり、よりきめ細かな解析も必要となった。これらの実験及び解析が2022年度にずれ込んだため次年度使用額が生じた。 抗体、PCR試薬、microRNA mimicと関連試薬を購入予定。
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