本研究では、飲酒欲求を調節する臓器連関シグナルとして我々が同定したFGF21-オキシトシン(Oxt)系について、脳内の解析を中心に計画した。 本研究を進めるにあたり、4つの実験を計画した。【実験1】アルコールによって活性化されるOxt神経の同定(室傍核(PVH)と視索上核(SON)に存在するOxt神経のうち、どちらがアルコールにより活性化されるか?)。【実験2】同定したOxt神経からのどの神経投射経路が、飲酒により活性化されるか(逆行性AAVベクターを用いて投射経路特異的に、各神経投射先を蛍光タンパク質によりラベリングしたマウスで、実験1を行う)【実験3】同定したOxt神経からのどの神経投射経路が、飲酒欲求を調節するために必要か?(逆行性AAVベクターを用いて投射経路特異的に、薬理遺伝学を使って神経活性を操作する実験)。【実験4】慢性アルコールモデルであるLieber-DeCarli食を用いたモデルで、実験1と実験③に相当する実験を行う。 実験を進める過程で、これまで動いていた2つの実験手技である「Oxtと神経活性化マーカーc-Fosの二重染色(実験1に必要な手技)」および「AAVベクターの調製(タイターが上がらなくなった)」に問題が生じ、昨年度はトラブルシューティングに追われた。その結果、予定した実験を完遂することができなかった。実験1に関しては、組織サンプルの採取は済んでおり、組織染色の条件の再調整が終了すれば、実験を完了することができる段階には到達した。 この間、実験4に用いる慢性アルコールモデルの作製において、多方面からの検討を進めた。その結果、従来のLieber-DeCarli食の問題点(流動食の摂取量がうまく測定できない、摂取量が安定せず、モデル作成効率が悪い)に対して、モデルの作製を容易にして、作成効率を高める改善策を発見することができた。
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