研究課題/領域番号 |
20K21764
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
田巻 弘之 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (40253926)
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研究分担者 |
荻田 太 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (50224134)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 骨 / 水中運動 / 環境 |
研究実績の概要 |
運動の効果は外的な環境によっても影響される。本年度の研究においてはまず低酸素環境での水中運動の効果を自然発症型2型糖尿病モデルラットを用いて検討した。ノーマルラット及び糖尿病モデルラットを気圧及び酸素濃度を調整できるチャンバーで平地環境もしくは標高2,500m環境相当で安静もしくは水中運動を実施した。水中運動トレーニングは水槽内で30分/日、5日/週で4週間実施した。トレーニング期間終了後、脛骨を採取して、3次元マイクロCTを用いて撮影し、骨梁構造を立体構築した。3次元構造解析ソフトにて脛骨近位幹端の骨量(BV/TB,%)、骨梁幅(Tb.Th)、骨梁数(Tb.N)、骨梁間距離(Tb.Sp)、骨梁連結密度等の骨微細構造への影響を調べた。 その結果、水中トレーニングを実施しない群での骨量に比較してトレーニング実施群では有意に高いレベルにあった。2,500m環境相当でトレーニングを実施した群は平地環境で実施した群よりも有意に高いレベルを示した。骨微細構造については、骨梁幅及び骨梁間距離においてはトレーニング環境の違いによる差異はみられなかったが、骨梁数及び骨梁連結密度においては2,500m環境相当でトレーニングを実施した方が有意に高いレベルを示した。また、ヒラメ筋の筋湿重量に関してトレーニング環境の違いによる差異は見られなかった。 これらのことから、糖尿病モデルラットの水中運動の骨量及び骨微細構造に対する効果は、外的環境によって影響される可能性が示唆された。またその効果は骨梁間の連結性などの骨梁構造の維持に現れることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の進捗状況として、運動トレーニングの外的環境の違いによる骨組織への影響の違いについて検証を行い、研究計画に準じて研究課題が遂行できた。骨組織への機械的刺激の程度は骨形成を促進して骨量を維持する重要な因子のひとつであるが、水中運動は骨への力学的ストレスが比較的低く、骨量増加を目指した運動負荷強度としてはやや不十分であるとの見解がある。本年度の研究実施で、水中運動の骨量や骨微細構造に対する効果をより強く創出する外的環境を明らかにできたこと、またそれらの基礎的データを獲得できたことは本研究課題の多くを達成するに至った。外的環境設定の違いによって運動効果の現れ方が異なる可能性を示唆する成績を得たことから、翌年度の研究計画に対する基礎的準備も整備された。
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今後の研究の推進方策 |
今後、低酸素環境において低強度/ローインパクトの運動でも骨量改善効果を発現する機序の一端について検証していく。低酸素環境暴露により低酸素感受性イオンチャネルを有する神経の選択的阻害を行い、骨量(BV/TV)、骨微細構造(皮質骨幅、骨梁幅、骨梁連結密度、骨梁間距離等)の構造解析、骨の力学的特性(破断強度試験:骨破断強度、stiffness、maximum load、elastic modulus等)、骨組織染色等による骨関連細胞の観察を実施してその効果が消失もしくは減弱されるかを調べ、低酸素感受性イオンチャネルを有する神経の関与について検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究成果の公表に関してオンライン等での学会参加(国内・国際)となったこと、骨組織の染色、画像解析、骨の力学的特性の分析業務を分担するリサーチアシスタントの雇用を次年度にしたため人件費・謝金や消耗品費の使用が抑えられた。以上のことから、旅費、物品費、謝金において使用額が減少したため。 次年度においては、社会状況によるが研究成果の公表のため国内外を移動する計画であり、一部旅費に充てる予定である。また、当初計画していた消耗品費(試薬等)、人件費・謝金、ならびに国際的な成果公表のための論文投稿料や英文校正費に充当する計画である。
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