研究実績の概要 |
運動の効果が外的な環境によっても現れ方が異なり、低酸素環境での持久的水泳運動の効果を実験動物で検証したところ、3次元マイクロCTで評価した骨量や骨梁微細構造の各パラメータにおいて、低酸素環境下での運動はより高くなることから、骨内支配感覚神経(低酸素感受性が報告されている感覚神経)をターゲットに、薬理的神経阻害実験を若齢期から高齢期の実験動物(ラット)を対象として実施し、骨組織及び筋組織への影響を分析した。若齢期、成熟期、高齢期のラットにTRPA1阻害剤(低用量、高用量)を投与して薬理的阻害を行い、その後、脛骨を採取して3次元マイクロCT装置で撮影し、3次元構築した。また3次元構造解析ソフトで骨量(BV/TB,%)、骨梁構造(骨梁幅(Tb.Th)、骨梁数(Tb.N)、骨梁間距離(Tb.Sp)、SMI、骨梁連結密度等)を解析した。高用量での阻害剤投与では、海綿骨の骨量の低下や骨梁微細構造の脆弱化が観察された。一方、採取した筋組織を薄切し、顕微鏡観察を実施したところ、TRPA1阻害剤投与群の下肢骨格筋(前脛骨筋、長趾伸筋、ヒラメ筋)はVehicle投与群と比較して筋湿重量及び筋線維横断面積ともに差がなかった。 骨組織内も支配する酸素感受性神経の薬理的阻害により骨組織の量的構造的パラメータにはネガティブな影響が現れたこと、また阻害剤投与による骨格筋への萎縮等の影響はいずれの用量においても見られなかったことから、通常は酸素感受性感覚神経は骨量や海綿骨骨梁構造の維持にポジティブに機能している可能性が推察された。
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