研究実績の概要 |
骨細胞は加齢に伴い減少する細胞である。骨細胞はネットワークを形成し、栄養素の受け渡しや情報伝達を行うと考えられているが、実態は明らかではない。「骨細胞が栄養センサーの役割を担い、その破綻は全身性の栄養代謝障害を介して老化を促進する」という新しい概念提示し、これらを証明を目指す。 2020年度は1. 骨細胞ネットワーク破断マウス作成・栄養代謝異常解析した。A) 骨細胞ネットワーク破断マウスとして、TRECK法による骨細胞欠損マウスとG-CSF投与による骨細管萎縮マウスを作成し解析サンプルを収集した。B) 栄養代謝異常解析として、カルシウム・リンの解析を行った。脂質/胆汁酸代謝を中心とした血液尿生化学検査, 胆汁酸組成解析を実施した。カルシウム・リン解析では老化加速に関与すると想定される、CPPについての解析を行ったところ、異常なCPP産生量の上昇が認められた。CPPは腎臓や血管などに慢性炎症を起こす可能性が考えられていることから、老化を加速させている可能性が示唆された。また胆汁酸の素性分析を行ったところ、二次胆汁酸の分布が、骨細胞ネットワークが破断されることで変動することが明らかとなった。よって脂質吸収に影響がでることが示唆された。2. 骨細胞ネットワーク破断による老化表現型の解析を実施した。 腎機能低下, 筋萎縮, 体脂肪低下, 異所性石灰化, 心肥大, 寿命, 腸内細菌叢の変動が認められた。3.骨細胞ネットワークの栄養センサー機能解析にリン負荷、リン制限を行ったところ、骨細胞ネットワーク破断マウスではリン負荷による尿中リン排泄が促進しなかった。さらに、リン制限による尿中リン排泄抑制も生じないことが明らかになった。
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