研究実績の概要 |
骨細胞は加齢に伴い減少する細胞である。骨細胞は自身や骨の他の細胞とネットワークを形成し、栄養素の受け渡しや情報伝達を行うと考えられているが、実態は明らかではない。しかしながら、昨年度の研究成果により骨細胞ネットワークの破断は、骨代謝異常、ミネラル代謝異常、脂質代謝異常を生じること、老化に伴いリスクが高まる骨粗鬆症、慢性腎臓病、筋萎縮、痩せや寿命短縮が間違いなく生じることがわかった。 そこで、引き続き今年度は「骨細胞が栄養センサーの役割を担い、その破綻は全身性の栄養代謝障害を介して老化を促進する」という我々の仮説を証明するために引き続き骨細胞ネットワーク破断による老化表現型の解析をおこなった。 著しい腎機能低下は尿中CPP濃度の異常な上昇により生じることが明らかとなった。また興味深いことに、腎機能がさらに低下すると尿中CPPは減少し血中CPPが生じることが明らかとなった。そのため尿中CPP濃度は腎老化の指標となると考えられた。また 筋萎縮, 体脂肪低下, 異所性石灰化,心肥大,寿命, 腸内細菌叢の変動は、新生骨細胞ができてくる過程で、症状が徐々に改善し、骨細胞欠損後2ヶ月ではすべての症状が改善し野生型と違いが認められなかった。これらの結果より骨細胞が充足されることにより、老化症状が改善することを証明することができた。骨細胞が欠損している状態で、多くの臓器においてエネルギー代謝異常、特に全身性のNAD 代謝異常が認められた。一方で、骨細胞ネットワーク破断マウスの栄養・運動療法の検討においては、予想以上に老化加速のスピードが速いため、考案した食餌や運動をさせることが困難であったため、骨細胞の減少数を検討し同様の研究を進めることとした。
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