研究実績の概要 |
経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation: TMS)により、運動を支配する脳領域である運動野を刺激すると、手指の筋が収縮する。この筋収縮の程度(筋電図上の運動誘発電位;Motor evoked potential, MEP)を被験者にフィードバックすることで、被験者が内因性にTMSで生じる筋収縮の大きさ(MEP振幅)を変化させることを学習する『TMSニューロフィードバック学習システム』が開発されている。この筋収縮の程度は、TMSの刺激の仕方により、変化する。例えば、二連発刺激では刺激間隔により筋収縮が抑制され、抑制性神経活動の活動程度を反映する。これは皮質内抑制と呼ばれる。本研究は、これらの神経活動をTMSニューロフィードバック学習により内因性に変化させることを学習させ、脳内神経活動の制御を目指すものである。昨年度においては、複数の健常者において、TMSニューロフィードバック学習により、皮質内抑制における抑制性神経活動を増強させ、内因性の運動学習を抑制させた。対側運動野とのペア刺激により、脳梁を介した抑制性神経の活動(Interhemispheric inhibition, IHI)が、小脳とのペア刺激により、小脳プルキンエ細胞の抑制性入力(Cerebellar inhibition, CBI)の活動が分かる。よって昨年度は、IHIやCBIを生ずるTMS刺激にて誘発されるMEPをフィードバックするシステムについて、開発を進めた。しかしながら、ペア刺激により生ずるMEP振幅の安定性が十分でないため、フィードバックさせるMEPについて、当該MEPの直前5~10回の平均値とするか、今後検討する必要がある。一方で、行動評価方法として、運動感覚(膝関節)や嚥下機能の脳活動について検討した。患者におけるシステムにおいてはこれらの評価法を用いる。
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