研究課題/領域番号 |
20K21771
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
田村 優樹 日本体育大学, 体育学部, 助教 (20794978)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 骨格筋 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
本研究では、骨格筋の培養細胞およびマウスの骨格筋組織において、空間情報を保持しながらミトコンドリアのATP産生能力を評価する新しい分析技術を開発することを目的としている。2021年度は、ミトコンドリアに局在型のATPバイオセンサーとミトコンドリア局在型のEGFPを発現するプラスミドの構築およびアデノ随伴ウイルスベクターの構築を行った。これらの妥当性を検証を行うために、骨格筋の培養細胞ならびに骨格筋組織に遺伝子を導入した。妥当性の検証として、細胞内の局在が確かにミトコンドリアであること、ピルビン酸およびリンゴ酸を基質とした際に、ADPの添加によりミトコンドリアのATP産生を惹起すると、ミトコンドリア局在型のバイオセンサーの蛍光強度が確かに上昇することを確認した。また、ミトコンドリア局在型のATPバイオセンサーの蛍光とミトコンドリアの空間位置情報を取得すするためのミトコンドリア局在型のEGFPの蛍光強度を除する画像演算アルゴリズムを構築した。それらを用いて、骨格筋の培養細胞を対象としたところ、高精度にミトコンドリアのATP産生能力の不均質性を評価することが可能であることが確かめられた。一方で、生体の骨格筋を対象とした試験では、ミトコンドリアの呼吸基質とADPによりミトコンドリアのATP産生に共役した呼吸を惹起すると、自発的な筋収縮が生じ、一部の画像解析が困難であるといった課題を見出すことができた。このように、本年度は、本新技術のアプローチを用いることにより、基本原理としては概ね本研究の目的を達成できる可能性が示唆された。今後は、測定精度のさらなる向上および生体の骨格筋においても安定して評価できるようにプロトコルの最適化を行うことが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、今年度の取り組みにより、本研究で挑戦した新技術の開発といった目的が最終的に達成できる可能性が高いといった手応えを得ることができている。一方で、生体の骨格筋を対象とした課題も抽出することができており、その解決策の候補もいくつか用意することもできている。このような状況から、2021年度の研究は、概ね順調に進展していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、引き続き測定精度のさらなる向上および生体の骨格筋においても安定して評価できるようにプロトコルの最適化を行うことに注力する。特に、生体の骨格筋において、自発収縮が生じる問題については、ミオシンのATPaseの阻害薬を用いて骨格筋収縮を制限することで課題を克服できると考えている。また、ミトコンドリアのATP産生能力を画像で出力できる本手法の特徴を生かして、非標識の培養細胞や生体の骨格筋からミトコンドリアのATP産生を予測するような深層学習のモデルを構築するところまで発展させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
空間情報を保持したミトコンドリアの評価方法により、新たな生理現象の発見につながる可能性を検討するために、運動による骨格筋のミトコンドリアの適応を促す実験モデルの利用が望ましいと研究計画上判断された。2021年度に、導入予定であった機材(マウス用トレッドミル)が、世界的な半導体の供給不足の影響を受けて、年度内の納品が困難となった。そのため、次年度使用を活用することで、適切な時期に当該機材を導入し、研究を発展させることが望ましいと判断されたため。
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