前年度に、空間情報を保持しながらミトコンドリアのエネルギー産生機構を評価する方法を開発した。これによって、本研究の主たるゴールは概ね達成された。2023年度は、これらの方法を用いて、解析する際の実験条件の最適化などを行った。とりわけ、AAVのパッケージング用の遺伝子材料を構築できたことにより、遺伝子導入が比較的困難である骨格筋の培養細胞や骨格筋の組織を対象とした試験の際に特に有用となると考えられた。我々が開発した手法は、顕微鏡の蛍光画像を最終的に出力することが特徴である。そこで、2022年度は、顕微鏡の明視野画像からミトコンドリアのATP産生能力の動態を示した蛍光顕微鏡画像を出力・予測するディープニューラルネットワークを構築するための取り組みを進めた。まず、ミトコンドリアだけではなく、核や細胞質を擬似的に染色するディープニューラルネットワークを構築することを目指した。ベースとなるアルゴリズムは、半教師あり学習としてStarGAN、教師なし学習としてCycleGAN、教師あり学習Pix2pixなどを用いて、比較検討を行った。その結果、CycleGANおよびPix2pixによって構築されたディープニューラルネットワークは、実用に耐えうる可能性が示唆された。このような取り組みにより、ミトコンドリアの位置情報を予測することが可能となったため、現在はこの技術を発展させ、ATPの産生動態を予測できるモデルの構築を進めている。
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