活動筋組織の酸素摂取量は,主に活動肢全体の血流量と動静脈血の酸素含有量の測定からFickの式(酸素摂取量=血流量×動静脈酸素較差)により推定されている。しかし,高い侵襲性や時間分解能の低さ,非活動組織(皮膚や脂肪など)血流の混入など課題が多く,ヒトを対象とした測定方法としては一般化されていない。そのため,運動能力に直接影響する活動筋の酸素摂取量の動態や最大値およびそれらを規定するメカニズムは十分に明らかにされていない。本研究の目的は,光技術を用いた骨格筋酸素摂取量の非侵襲連続測定法を開発し,運動時における活動筋酸素摂取量の動態と最大値を計測すること,およびそれらに対するトレーニング効果を解明することである。 開発する新法は,申請者らが独自に開発してきた拡散相関分光法(DCS)による活動筋血流計測と近赤外分光法(NIRS)による組織酸素飽和度測定の同時計測を実現し,それらを用いて活動筋酸素摂取量を算出するものである。2022年度においては,昨年度までに開発したDCS・NIRS装置を用いて,上肢および下肢の動的運動時において活動筋の血流量,酸素飽和度および酸素摂取量を連続的に計測することに成功した。また,開発した新法による酸素摂取量測定の妥当性を検討するために,従来法であるNIRSを用いた運動後虚血時の酸素飽和度変化に基づく酸素摂取量測定との比較を行った。新法と従来法のそれぞれにより算出した酸素摂取量の間には強い相関がみられたことから,新法により虚血を必要とせずに活動筋の酸素代謝を非侵襲かつ連続的に計測可能であることが確認された。
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