研究課題/領域番号 |
20K21779
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
多田 敬典 横浜市立大学, 医学研究科, 特任准教授 (20464993)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | コルチゾール / 概日リズム |
研究実績の概要 |
高齢者で見られるコルチゾール(CORT)分泌の概日リズムの低下は、アルツハイマー病態を重篤化させるリスク要因として近年注目されている。これまでに応募者は慢性的なストレス環境による高CORT血症が、内側前頭前野前辺縁皮質(mPFC-PrL)神経細胞のシナプス機能障害を誘導し、認知機能低下を引き起こすことを明らかにしてきた。しかしながら、シナプス機能はCORT概日リズムに即して再構成を繰り返すとされており、加齢によるCORT概日リズム低下が、どのような過程を辿りアミロイドβ(Aβ)と共にシナプス再構成経路を阻害し、最終的に認知機能障害を重篤化させるのか、その詳細な分子メカニズムは十分解明されていない。本研究ではこれまでの研究を発展させ、老齢期アルツハイマー病モデル動物を用い、加齢に応じて低下するCORT分泌の概日リズムに着目し、mPFC-PrLでのシナプス再構成系に関わる神経細胞・ミクログリア内の日内変動発現する遺伝子群を探索し、アルツハイマー病態を増悪化する経路の解明を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在までに加齢したアルツハイマー病モデル動物APP-KIマウス(APP: Aβ前駆体タンパク質ノックインマウス)の尿を採取し、尿中のコルチゾール量について検討を行った。加えてAPP-KIマウス脳内mPFC神経細胞からタンパク質を抽出し、シナプス機能タンパク質および脳内炎症について検討を行った。また加齢動物における認知機能関連行動解析を複数立ち上げ、今後の認知機能評価系確立の土台を作り上げることができた。しかしながら申請者の異動等に伴い、当該年度に予定していた加齢APP-KIマウスの行動解析に至らず、当初予定したより研究課題内容が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
老齢期アルツハイマー病モデル動物モデル動物の加齢性CORT分泌概日リズム低下を介した認知機能障害誘導因子群の同定を試みる。 (1)老齢期APP-KIマウスのCORT分泌の日内変動計測 代謝ケージ内で飼育している動物から尿を採取し、尿中からの非ストレス下状態の体内CORT量の計測を行う。時系列(1日3時間おき)に採取することで、当該動物のCORT分泌量の日内変動を評価する。 (2)老齢期APP-KIマウスの認知機能行動の日内変動解析 加齢したAPP-KIマウスでの認知行動解析を朝6:00-8:00、夕18:00-20:00にそれぞれ行う。水迷路試験、Y字型迷路試験、新規物体認識試験を用いた複数行動解析を行う。加齢性CORT分泌概日リズム低下によるアルツハイマー病態増悪化の指標となる認知機能行動の評価をする。 (3)老齢期APP-KIマウスmPFC-PrLにおける認知機能障害誘導因子群の同定 Laser Micro Dissection 法により時系列ごとのmPFC-PrL組織を特異的に切り出し回収する(1日3時間おき採取)。MACSカラム(Miltenyi Biotec社)を用いた細胞分離法により、神経細胞とミクログリア細胞に分離し、RNAシーケンス(RNA-seq)解析を行う。解析因子群の中から、遺伝子発現の日内変動振幅が異なる経路の同定を試みる。また同時にmPFC-PrLの細胞内外Aβ-42蓄積量測定により、Aβクリアランスの時系列解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の異動等に伴い、当該年度に予定した機器等の購入が進まなかった。そのため次年度の購入予定に変更となり、当該繰越金が発生した。次年度は、加齢したAPP-KIマウスを用い、概日リズムに即した認知行動評価を行うための機器等を整備し、飼育維持費、因子群同定のための解析費用に本研究費を使用する予定である。
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