研究実績の概要 |
超高齢化社会に突入した我が国において、健康寿命の延伸が重要視されている。団塊の世代が75歳(要介護率が増加する年代)を迎える2年後は2025年問題として、社会全体の対応策が求められており、健康寿命延伸のための予防・健康づくりプランが推進されている。特に高齢者の20%を占める認知症の改善は、健康長寿社会実現に欠かすことができない要因の一つである。しかしながらアルツハイマー病を含む認知症に対する治療薬開発は長年苦戦が強いられている。 認知症発症要因の一つとして、加齢は最大のリスク要因とされているが(Hou et al., Nat Rev Neurol, 2019)、加齢に伴う身体的変化は多岐にわたる。そのため認知機能に対する加齢の影響は複雑である。その中で、加齢性変化とライフスタイルとの因果関係が注目を浴びており、内分泌機能に起因するものが多く含まれる。一方で内分泌機能異常に伴う認知症は、治療可能な認知機能障害に含まれ、早期診断・治療することで改善が見込まれることが知られており、(Matsunaga et al., Brain Nerve, 2016)、認知症の初期脳内変化について理解し、内分泌機能との関係性を明らかにすることは重要と考えられる。 本研究では、高齢者で見られる内分泌機能変化として、コルチゾール(CORT)の分泌パターンの加齢性変化に着目し、それに伴う脳内変化および行動解析をマウスの系を用いて行なった。加齢マウスでは、CORT分泌の概日リズムに異常が生じるとともに、認知機能および情動機能に異常が生じることを明らかにした。また脳内細胞老化および脳内炎症に関わる因子群の亢進が誘導され、シナプス機能が低下することを示した。このように本研究では、加齢性CORT概日リズム低下が、認知症増悪化につながる可能性を示唆した。
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