• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

ソーシャルメディアの多様な現象を生むユーザ行動原理の解明と実スケール第一原理計算

研究課題

研究課題/領域番号 20K21783
研究機関千葉大学

研究代表者

塩田 茂雄  千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (70334167)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2023-03-31
キーワードソーシャルメディア / Twitter / 情報拡散 / リツイート / SIRモデル / 合意形成 / 安定分布
研究実績の概要

新型コロナウイルス感染症の流行の影響により,学内の立ち入りの制限等があり,当初予定していた通りでの計画の遂行ができなかったが,幾つかの学術的に興味深い結果を得ることができた.以下,項目別に述べる.
(1)ソーシャルメディア上の情報拡散の第一原理モデルの構築とその解析手法の開発:Twitter上のリツイート拡散のようなソーシャルメディア上の情報拡散を記述する第一原理的な数理モデルを構築するとともに,同モデルを解析的に評価する手法を開発した.構築した第一原理モデルはネットワーク構造を陽に取り入れたSIR(Susceptible-Infected-Recovered)モデルをベースとするものである.構築したモデルが現実のリツイート拡散を精緻に再現し得ることを実証するとともに,全く新たな近似解析手法を開発し,既存の近似解析手法よりも格段に再現精度が優れることを示した.
(2)バズったツイートの情報拡散経路の分析:多数のリツイートを獲得した,バズったツイートのリツイート拡散経路について実データに基づいて分析し,フォロイー・フォロワーの繋がりによる拡散よりも,インターネット検索やまとめサイト等でツイートを目にした(投稿者と関係のない)ユーザによる拡散が支配的であることを明らかにした.
(3)ソーシャルメディア上の合意形成過程と合意結果の数学的特徴の分析:ソーシャルメディア上の合意形成過程を記述する数理モデルに基づき,合意形成過程と合意結果についてその数学的特徴を分析した.その結果,既約性などの条件が満たされれば合意は確率1で形成されること.合意結果は確率変数であり初期意見の重み付き無限和の形で与えられること,初期意見が安定分布に従えば合意結果も安定分布に従うこと,などの結果を導くことに成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

【研究実績の概要】で述べたように,新型コロナウイルス感染症の流行の影響は受けたが,理論的な側面については,幾つかの学術的に興味深い結果を得ることができ,概ね順調に推移している.以下,項目別に述べる.
(1)ソーシャルメディア上の情報拡散の第一原理モデルの構築とその解析手法の開発:ソーシャルメディア上の情報拡散を記述する第一原理的な数理モデルを提案し,同モデルを解析的に評価する手法の開発に成功した.提案した第一原理モデルはネットワーク構造を陽に取り入れたSIRモデルをベースとする.提案モデルが現実のリツイート拡散を精緻に再現し得ることを実データに基づき実証するとともに,新たな近似解析手法を開発し,既存の近似解析手法よりも格段に再現精度が優れることを発見した.結果はオープンアクセスの学術論文誌に掲載済である.
(2)バズったツイートの情報拡散経路の分析:多数のリツイートを獲得したツイートのリツイート拡散経路について実データに基づいて分析し,フォロイー・フォロワーの個人的な繋がりによる拡散よりも,公共インターネット空間経由での拡散が支配的であることを明らかにした.結果は国際会議で発表した.国際会議論文はIEEE Xplore上で閲覧可能である.
(3)ソーシャルメディア上の合意形成過程と合意結果の数学的特徴の分析:ソーシャルメディア上の合意形成過程を記述する数理モデルに基づき,合意形成過程と合意結果についてその数学的特徴を分析した.その結果,既約性などの条件が満たされれば合意は確率1で形成されること.合意結果は確率変数であり初期意見の重み付き無限和として与えられること,初期意見が安定分布に従えば合意結果も安定分布に従うこと等を示した.結果は国際会議で発表した,国際会議論文はACMの電子ライブラリーで閲覧可能である.また,その拡張版を,学術雑誌に投稿中である.

今後の研究の推進方策

(1)ソーシャルメディア上の情報拡散の第一原理モデルの構築とその解析手法の開発
2020年度に提案したモデルの拡張について検討する.特に,リツイートが連鎖的に行われる過程を確率微分方程式により記述することが可能であるかを検討する.また,第一原理モデルに基づきユーザ数が数十万規模のシナリオで高速シミュレーションする技法について検討する.加えて,リツイートの拡散により新たなオリジナルツイートの投稿が促される過程についてのモデル化を行う.
(2)バズったツイートの情報拡散経路の分析
フォロイー・フォロワーの個人的な繋がりによる拡散よりも公共インターネット空間経由での拡散が支配的であることを直接的に実証するデータの取得を目指す.また,(1)で述べたモデルに公共インターネット空間経由での拡散の影響を取り入れる.加えて,公共インターネット空間経由での拡散の影響が支配的であることを用いて,リツイート数の分布がべき指数2未満のべき分布に従うことを説明し得る数理モデルを構築する.
(3)ソーシャルメディア上の合意形成過程と合意結果の数学的特徴の分析
2020年度に得られた結果を,より数学的に洗練された形に拡張するとともに,2020年度に用いたモデルでの仮定(ネットワーク構造の規約性など)の緩和を試みる.現モデルでは,初期意見が安定分布に従うといった条件以外では解析結果を陽に導くことは困難であるため,一般的な条件での結果を得るために,大規模ネットワークでシミュレーションを行うための環境を構築する.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ感染症の流行に伴い,大学への入構等が制限されていた時期があり,主として計算機実験による実施を予定したいた項目を次年度へ延期した.また.参加を予定していた学会が中止,もしくはvritual開催となったことに伴い,旅費や参加費の支出が不要となった.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Distribution of Consensus in a Broadcasting-based Consensus-forming Algorithm2021

    • 著者名/発表者名
      Shioda Shigeo
    • 雑誌名

      ACM SIGMETRICS Performance Evaluation Review

      巻: 48 ページ: 91~96

    • DOI

      10.1145/3453953.3453974

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Information Spread across Social Network Services with Non-Responsiveness of Individual Users2020

    • 著者名/発表者名
      Shioda Shigeo、Nakajima Keisuke、Minamikawa Masato
    • 雑誌名

      Computers

      巻: 9 ページ: 65~65

    • DOI

      10.3390/computers9030065

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Coupon Subset Collection Problem with Quotas2020

    • 著者名/発表者名
      Shioda Shigeo
    • 雑誌名

      Methodology and Computing in Applied Probability

      巻: 1 ページ: 1~33

    • DOI

      10.1007/s11009-020-09811-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Existence of Twitter Users with Untraceable Retweet Paths and its Implications2020

    • 著者名/発表者名
      Shioda Shigeo、Nakajima Keisuke
    • 雑誌名

      Proceeding of the 2020 Seventh International Conference on Social Networks Analysis, Management and Security

      巻: 1 ページ: 1~8

    • DOI

      10.1109/SNAMS52053.2020.9336544

    • 査読あり
  • [学会発表] ブロードキャスト型合意形成における合意結果の確率特性2021

    • 著者名/発表者名
      加藤大, 塩田茂雄
    • 学会等名
      待ち行列シンポジウム「確率モデルとその応用」
  • [学会発表] Distribution of consensus in a broadcast-based consensus-forming algorithm2020

    • 著者名/発表者名
      S. Shioda
    • 学会等名
      IFIP WG 7.3 Performance
    • 国際学会
  • [学会発表] Existence of Twitter users with untraceable retweet paths and its implication2020

    • 著者名/発表者名
      S. Shioda and K. Nakajima
    • 学会等名
      International Conference on Social Networks Analysis, Management and Security
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi