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2021 年度 実施状況報告書

ソーシャルメディアの多様な現象を生むユーザ行動原理の解明と実スケール第一原理計算

研究課題

研究課題/領域番号 20K21783
研究機関千葉大学

研究代表者

塩田 茂雄  千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (70334167)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2023-03-31
キーワードソーシャルメディア / Twitter / 情報拡散 / リツイート / SIRモデル / 合計形成 / 安定分布
研究実績の概要

新型コロナウイルス感染症による影響で半導体などが供給不足となり,購入予定であった計算機の納入の目途が立たずに購入を見合わるなどの影響があったが,学術的には興味深い結果を得ることができた.以下,項目別に述べる.
(1)ソーシャルメディア上の情報拡散の第一原理モデルの構築とその解析手法の開発:
Twitterにおけるリツイート回数は広範囲に分布し,その分布の裾は非常に長いことが知られている.このリツイート回数の統計的な特徴の背後には,「リツイート回数が増えるほど,更にリツイートされやすくなる」というマタイ効果と呼ばれるメカニズムが隠れていると予想し,そのマタイ効果の定量化を試みた.その結果,リツイートのされやすさは累積リツイート回数のδ乗に比例して増えることを仮定すると,リツイート回数の分布の特徴が大変良く再現されること,またδの値はおおむね0.75から0.9の間に収まることを確認した.
(2)ツイートの情報拡散経路の分析:Twitterユーザは,(1)オリジナルツイートの投稿を専ら行う(情報拡散に寄与しない)ユーザと,(2)リツイートを専ら行う(情報拡散に寄与する)ユーザに二極化する傾向があることを見出した.
(3)ソーシャルメディア上の合意形成過程と合意結果の数学的特徴の分析:
ソーシャルメディア上の合意形成過程の数学的な特徴,特に各エージェントが自分と隣接エージェントの意見の重み付き平均をとって自分の意見と置き換えることを繰り返す合意形成過程について考察した.その結果,各エージェントの初期意見が安定分布に従う場合,その特性指数により合意形成過程が大きく影響されること,とりわけ特性指数が1未満の場合,合意形成を図る行為がかえって合意形成を阻む危険性があることを発見した.またこの特徴は,エージェント(ソーシャルメディアユーザ)のつながり方や意見交換の方法によらず成立することを証明した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウイルス感染症による影響で計画変更を一部余儀なくされたが,全般的には満足のいく数学的な結果を得ることができている.
1.「リツイートのされやすさは累積リツイート回数のδ乗に比例して増える」という単純なモデルにより,現実のリツイート回数分布の特徴が再現できることを見出したこと,またδの値について定量的な見積もりができたことは重要な成果である.見出したモデルは非常に単純なものであるが,現実の分布をより良く再現するために解析可能性を維持しつつモデルの詳細化を行うための目途もついている.また,このモデルに基づいて,リツイート回数の将来的な伸びを予測することも可能であると考えられる.
2. Twitterユーザは,情報拡散にほとんど寄与しないユーザと,専ら情報拡散に寄与する(リツイートにのみ専念する)ユーザに分かれる傾向があることを見出したことも有意義な成果である.ソーシャルメディア上で見出される種々の現象の説明に,このようなユーザの二極性を考慮することは重要であり,今後,より詳細に分析をしていく.
3. ソーシャルメディア上の合意形成過程については,数学的に深い結果を得ることができた.当初は,ユーザ間のネットワークが完全グラフであることやブロードキャスト型の合意形成アルゴリズムを仮定していたが,これら仮定を取り除く目途が立ったことも重要な成果である.

今後の研究の推進方策

(1)ソーシャルメディア上の情報拡散の第一原理モデルの構築とその解析手法の開発:
R2年度に提案した情報拡散のモデルに,R3年度に見出した(マタイ効果により)情報拡散の加速化の機構などを取り入れたモデルを構築し,モデルの性質を数学的に分析するとともに,具体的な解析手法(数値評価手法)を検討する.加えて,R3年度に見出したマタイ効果の定量化モデルを用いて,リツイート回数の将来的な伸びの予測手法について検討する.
(2)ツイートの情報拡散経路の分析:Twitterユーザが,(情報源を投稿するものの)情報拡散への寄与が少ないユーザと,情報元は投稿せず専ら情報拡散に寄与するユーザに二極化する傾向が,(例えば国籍等を超えて)広く見出されるTwitterの特徴であるか否かをより多くの実データを通して検証する.また,情報拡散がFollowee-Followerツリー以外の経路で生じていることの裏付けとなるデータを収集する.
(3)ソーシャルメディア上の合意形成過程と合意結果の数学的特徴の分析:
現実のソーシャルメディアにおいて合意形成が図られることは稀であるが,そこには意見更新行列が既約でないといったソーシャルメディアの特徴が背後にあると考えられる.意見更新行列が既約でない場合の意見更新過程の数学的な特徴について考察し,意見更新行列が既約でない場合にいわゆる「エコーチェンバー現象」が生じる可能性ついて検討する.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ感染症の影響による半導体不足により納入時期に目途がつかなくなり,幾つかの計算機の購入を見合わせた.また,参加を予定していた学会の大半が中止やVirtual開催となったため,旅費や参加費の支出が不要となった.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Probability laws of consensus in a broadcast-based consensus-forming algorithm2021

    • 著者名/発表者名
      Katoh Dai、Shioda Shigeo
    • 雑誌名

      Stochastic Models

      巻: 38 ページ: 91~115

    • DOI

      10.1080/15326349.2021.1982394

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ブロードキャスト型合意形成における合意結果の確率特性2021

    • 著者名/発表者名
      塩田茂雄, 加藤大
    • 雑誌名

      オペレーションズ・リサーチ

      巻: 65 ページ: 591-599

  • [学会発表] 確率的合意形成アルゴリズムにより形成される合意結果の確率的性質2022

    • 著者名/発表者名
      塩田茂雄, 竹原健太
    • 学会等名
      電子情報通信学会 総合大会チュートリアルセッション, NT-1-2
    • 招待講演
  • [学会発表] リツイート数分布の特徴を再現するTwitterユーザのリツイート行動モデル2022

    • 著者名/発表者名
      塩田茂雄, 小西隆仁
    • 学会等名
      電子情報通信学会 通信行動工学研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] べき指数が 2 未満のカスケードサイズ分布を再現するツイート投稿モデル2021

    • 著者名/発表者名
      小西隆仁, 塩田茂雄
    • 学会等名
      電子情報通信学会 ソサイエティ大会, B-11-20
  • [学会発表] ブロードキャスト型合意形成における合意結果の確率的な性質に関する考察2021

    • 著者名/発表者名
      塩田茂雄, 加藤大
    • 学会等名
      電子情報通信学会 コミュニケーションクオリティ研究会, CQ2021-33
  • [学会発表] ブロードキャスト型合意形成における合意結果の分布に関する考察2021

    • 著者名/発表者名
      塩田茂雄
    • 学会等名
      日本オペレーションズ・リサーチ学会 待ち行列研究部会

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公開日: 2022-12-28  

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