3Dスキャナの発展に伴い,3次元形状表現としてのポリゴンデータが広く社会に浸透してきている.ポリゴンデータの実体化にあたって,紙や金属板などのシート材を用いる場合には,ポリゴンデータを可展形状として近似することが必要不可欠である.従来の研究では,3次元CADで得られるパラメトリック曲面形状を前提としており,形状データを複数パーツに分割して,各パーツを柱面や錐面などの可展面やストリップと呼ばれる帯型形状によって可展形状としての近似を実現していた.しかし,ポリゴンデータの場合,位相構造がまったく異なってしまうため,近似誤差を議論することやパーツ数を制御することが困難になっていた.本研究では,与えられたポリゴンデータの位相を保存したまま可展形状近似することを目指す.つまり,入力形状と近似形状の各要素を一対一に対応できるように,パーツを稜線に沿って分割するとともに,位相を保存したまま可展形状に変換することにする.これにより入力形状と近似形状の対応関係を容易に得られるようになる.このためには,元のポリゴンデータの形式のまま,可展性の判定や近似を行う必要がある.そこで,可展性の評価にあたって頂点周りの角の総和という離散幾何学的な特徴を用いることとした.また分割するパーツ数が少なければ,仮に切れ目があっても接合部の対応関係を容易に判断でき,組立て工作の手間は大幅に減少できるものと想像された.そこで,パーツを稜線に沿って分割する際には,パーツ数を可能な限り抑えることを目指した.この処理においても,ポリゴンデータ,すなわち離散曲面を直接扱うために,離散曲面の特徴量を利用する方法が必要となり,手法の開発・検証を実施した.
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