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2022 年度 実施状況報告書

Beyond-CMOSを用いた超低消費電力・高速集積回路・アーキテクチャ技術

研究課題

研究課題/領域番号 20K21791
研究機関東京工業大学

研究代表者

菅原 聡  東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40282842)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2024-03-31
キーワードBeyond-CMOS / 超低電圧トランジスタ / 超低消費電力高速ロジック / 超低消費電力高速メモリ
研究実績の概要

マイクロプロセッサやSoCなどのCMOSロジックシステムにおいて,0.2V程度の超低電圧駆動は大幅な消費電力の削減を期待できるが,従来のCMOS技術ではトランジスタの電流駆動能力の低下にともなう速度性能の劣化が著しく用途が限られる.Beyond-CMOSの1つであるPiezoelectronic transistor (PET)は,金属的に低抵抗の状態と,絶縁体的に高抵抗の状態の2つの状態を,低電圧で容易に遷移できる超低電圧駆動・高電流駆動能力トランジスタである.本研究課題では,このPETをBeyond-CMOSの一つのモデルケースとして,0.2V程度の超低電圧におけるGHz級動作が可能な超低電力・高速ロジックシステムの回路・アーキテクチャ技術の開発を行う.本研究で開発する技術はPETと同様のトランジスタ性能を有するBeyond-CMOSであれば,共通に応用できる基盤技術となる.
本年度は,これまでに開発してきたPETを用いたSRAMやFFなどの基本記憶回路技術の詳細の検討を行った.はじめにSRAMについて,高電流駆動能力設計と低リーク設計の2種類のPETを設計して,これらのPETを用いてSRAMセル(低電圧セル)および周辺回路を構成し,0.2Vの駆動電圧で,上記2種類のPETを用いて性能を再検証した.高電流駆動能力設計では,1GHz以上の動作周波数を実現し,平均電力を50%程度削減できることを明らかにした.低リーク設計のPETでは,高電流駆動能力設計の8割程度の動作周波数となるが,平均電力を90%程度削減できることを示した.また,同様にFFについても検討を行った.PETを用いてマスタースレーブ型FFを構成し,ゲートを構成するチャネル数と,バックゲート効果を考慮して,遅延と電力の関係を明らかにし,PETを用いたFFの最適設計法を示した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題では圧力による金属-絶縁体転移によって,金属的な低抵抗状態と絶縁体的な高抵抗状態の2つの状態間を連続遷移可能なナノ構造ピエゾ抵抗体チャネルと,圧電体によってこのチャネルに高感度に圧力を印加できるゲート構造を有するPiezoelectronic transistor (PET)を用いて,超低電圧・高速ロジックシステムの基盤技術を創出する.具体的には,(1) PETのSPICEモデル,(2) メモリセルおよびロジックゲートの回路技術,(3) アーキテクチャ技術の開発を行う.
本年度は項目(2)のSRAMとFFについて,(3)の検討に向けた最終検討を行った.SRAMでは,高電流駆動能力設計と低リーク設計の2種類のPETを用いて,消費電力と動作周波数の性能評価から,PETを用いたSRAMセルアーキテクチャを検討した.次に,同様に2種類のPETを用いたFFの検討を行い,それぞれの場合についてPETのチャネル数,バックゲート効果によって遅延と消費電力を最適化できることを明らかにし,FFの設計指針を得た.

今後の研究の推進方策

本研究では新型PETによって,0.2V程度の超低電圧駆動で劇的な低消費電力化と,現状CMOS技術と同等以上の高速性能を有するロジックシステムの基盤技術を創出する.具体的には,電力遅延積が現状より2桁程度小さいロジックシステムの実現を目指す.ここで提案する技術群はCMOS構成のロジックシステム技術を踏襲し,現行のアーキテクチャを継承して,究極の省エネ化を可能とする新たなロジックシステムを構築することができる.本技術はPET以外の同等のBeyond-CMOSにも応用が可能である.次年度は,開発した回路技術をベースに,SRAMやFFなどの双安定回路の最適化を行い,電力遅延積などの回路性能の評価を行い,CMOS回路との比較からBeyond-CMOSの有用性を明らかにする.超低電圧下でも重要となるクロックゲーティングなど低消費電力化アーキテクチャの導入も検討する.以上から,PETのようなBeyond-CMOSを用いた超低電圧で高性能のロジックシステムを構築する回路・アーキテクチャに関する基盤技術を創出する.

次年度使用額が生じた理由

コロナウィルス蔓延の影響でR3年度の計画の一部を本年度(R4)に実施した.この部分は修正した計画通り進めることができたため,その後の研究計画遂行への影響は出ていないが,R3年度の影響で当初R4年度に計画していた研究を引き続きR5年度に行う.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] CMOS プラットフォームを用いた新技術の創成:超低消費電力 CMOS ロジックシステム,BeyondCMOS デバイス,体温を用いた熱電発電モジュール2022

    • 著者名/発表者名
      菅原聡
    • 雑誌名

      日本熱電学会誌

      巻: 18 ページ: 159-162

    • 査読あり
  • [学会発表] 新型超低電圧リテンションSRAM (ULVR-SRAM)セルの提案2022

    • 著者名/発表者名
      伊藤克俊,塩津勇作,山本修一郎,菅原聡
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会

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公開日: 2023-12-25  

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