研究課題/領域番号 |
20K21793
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 高史 京都大学, 情報学研究科, 教授 (20431992)
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研究分担者 |
Bian Song 京都大学, 情報学研究科, 助教 (00866030) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 物理的複製困難関数 / PUF / 認証 / セキュリティ |
研究実績の概要 |
集積回路に代表される半導体部品の市場においては、正規品と偽った偽造品や、悪意ある改ざんを施したいわゆるハードウェアトロイを含む部品の流通が懸念されている。この対策として、半導体部品の真贋性や改ざんの有無を判定し、また防止する仕組みが必要となる。こうした手法の一つとして、物理的複製困難関数(PUF)回路を活用する半導体部品の個体識別や安全性検証の研究が活発に行われている。PUFは、入力値であるチャレンジCを与えると、対応するレスポンスを出力値Rとして返す関数として機能する。チャレンジとレスポンスの対応(CRP)は、チップ製造工程において人工的に制御ができる限界以下の物理的なばらつきに依存して決まる。このためPUF回路は、「同じチャレンジに対するレスポンスがチップごとに異なる人工的な複製が困難なチップ固有の関数」として機能させることができる。これにより、チップの個体識別や暗号プロトコルにおける使用、更には小規模な回路で実現可能である特徴からIoTデバイスのセキュリティ回路等、様々なセキュリティシステムでの応用が検討されている。 これまで行ってきた、CPUFについて活用方法の具体化と、それを回路として構成する方法についての基礎的検討を踏まえて、具体的な回路設計に取り組んだ。メモリスタ等の不揮発メモリのプロセスを用いる実現手法を含め、広く回路構成を検討した。製造の容易性とコスト低減を図るには、完全なシリコンプロセスでの回路実装が望ましいことから、CMOSプロセスでの回路実装方法を検討し、実現の見通しを得ている。 また、ヘルスケア等の機微情報を扱う応用や、将来の鍵交換技術や暗号技術において、CPUFが応用できる可能性について検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CPUFの概念検討に引き続いて実施した回路構成に関する検討に基づいて、シャトルプロセスを用いた試作評価を行うことを想定して回路設計を行うとともにその検証を開始している。構想段階では、メモリスタなどの特殊なプロセスを要するデバイスを用いて小規模な機能ブロックを作製し評価することも想定していたが、それを置き換える形で広く用いられているCMOSプロセスを用いて製造時に値を複製できる回路を発案し、シミュレーションでは動作が可能である見込みを得ていることから、計画時に想定した内容に相当する進展があると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
weak PUFとして分類されるCPUFをシリコンプロセスで設計できる見通しを得たことから、シャトルプロセスを活用して試作し、その測定を通じて概念の検証や発展的回路の検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初候補の一つとして考えていたメモリスタ等のやや特殊なプロセス技術を用いることなく、広く使われているシリコンプロセスでCPUFを実現する方法について検討を進め、その見込みを得たことからシミュレーションによる動作確認や回路設計、レイアウト設計に注力している。そのため執行予定の大部分を占める試作が完了していない。設計が完了し次第、計画通りの試作と性能評価を実施する。 また、本研究に強く関連する国内研究会への参加費や学会への参加を見込んで旅費を計上していたが、いずれもオンライン開催等となり支出が大幅に抑えられた。これらの経費については、CPUFの実現性をチップ試作により確認するためのチップ試作費やプローブカード等、測定に必要となる消耗品等に有効に活用するよう見直しをしている。
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備考 |
情報回路方式(佐藤高史)研究室 ウェブページ http://easter.kuee.kyoto-u.ac.jp/ 研究成果を論文誌や学会にて発表した際に、その内容を平易にまとめて公開している。
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