研究課題/領域番号 |
20K21795
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
五十部 孝典 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 准教授 (30785465)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
キーワード | プルーフオブワーク / ブロックチェーン / ハッシュ関数 / 原像復元問題 / ブロック暗号 / 鍵回復問題 |
研究実績の概要 |
本研究では、任意計算によるプルーフオブワークの実現を目指す。具体的には任意の計算をプルーフオブワーク用の問題へ変換する方法に取り組んでいる。一般的に、プルーフオブワーク(PoW)で用いられている問題は以下の性質を満たす必要がある。 1。 専門ハードウェアでの演算の効率化が困難 2。 演算結果の正しさをだれでも簡単(非常に少ない計算量で)に検証可能 初年度は、任意演算でのプルーフオブワーク実現のための最初のステップとして、1と2の性質を同時に満たすプルーフオブワークの構成の設計に取り組んだ。具体的には、「新しいハッシュ関数の原像復元問題をベースにした方式」と「EM暗号の鍵回復問題をベースにした方式」の2種類を考案した。ハッシュ関数の原像復元問題は、ビットコインのPoWでも用いられており、SHA-2と呼ばれるハッシュ関数が問題に用いられている。しかしながら、SHA-2の原像復元問題を解くためには、メモリが不要であるためASICによる高速化が可能であり、性質1を満たしていなかった。そこで、問題に用いるハッシュ関数をスポンジ構造をであるハッシュ関数SHA-3に変更し、パラメータをうまく選択することで1と2を同時に達成するPoWを実現した。結果は国内シンポジウムCSS2020で発表し、論文賞を受賞した。また、情報処理学会の論文誌に招待されるなど学術的に高い評価を得た。また、EM暗号の鍵回復問題をベースにしたPoWでは、SHA-3ベースと同様に性質1と2を満たすPoWでかつ、より細かい問題の難易度や使用するメモリ量を調整可能とした。結果は、国内シンポジウムSCISで発表を行い、現在英文論文誌IEICEに投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標である性質1と2を満たすPoWの開発には成功した。具体的には、「新しいハッシュ関数の原像復元問題をベースにした方式」と「EM暗号の鍵回復問題をベースにした方式」の2種類を解発した。設計した新たなPoWは、CSS2020論文賞受賞や論文誌への招待など、学術レベルで高い評価を得ており、研究は概ね順調に進んでいる。これをベースの問題として、最終目標である任意演算で実現可能なPoWの実現を目指
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるため、初年度に作成した安全なPoWのベースに任意計算で実現可能なPoWの設計を行う。具体的には、特定の意味のある問題からPoWの実現を目指す。現在意味のある問題として想定しているのは、「遺伝的アルゴリズムをベースにした構」成をターゲットにしている。遺伝的アルゴリズムは巡回セールスマン問題等の問題に使われており、世の中で非常にニーズのあるアルゴリズムである。この問題をベースにPoWを設計できれば、PoWが意味のある演算で実現可能であり、さまざまな問題を解決する計算プラットフォームにすることが可能であると考える。技術的に困難な点は、このアルゴリズムの計算量の正確な見積もりである。PoWにおいては、特定の計算量以上が解くのに必要であることを保証する必要があるため、いかに計算量の下限を保証するかを考える必要がある。今後としては、これらの課題の解決を目指し、最終的な目標を達成する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた海外出張が中止になったとともに、計算機サーバの納品がコロナの影響で間に合わなかったため、次年度に購入することになり、次年度使用額が生じた。
|