初年度に作成した安全なPoW(Proof of Work)のベースに任意計算で実現可能なPoWの設計を引き続き実施した。昨年度に考案した遺伝的アルゴリズムをベースにした初期アイデアは国内学会で発表したが、本年度はさらに詳細な安全性評価やアプリケーションシナリオの検討を実施した。これらをまとめた完全版を論文としてまとめ、英文論文誌に投稿し、採択された。 さらに、PoWの問題をブロックチェーン以外への応用することも目的に、同様のアイデアからホワイトボックス暗号を設計した。ホワイトボックス暗号では、鍵をテーブル内に隠すことで、攻撃者はデバイスにアクセスしても秘密情報を取得することができない。また鍵と等価な情報を取得し、別デバイスへコピーするためには大量のデータをデバイスから盗む必要がある。このホワイトボックス暗号をPUF(Physically Unclonable Function)と組み合わせることで、暗号演算を特定のデバイスでしか実行不可能なデバイスバインディング技術へ拡張した。PUFとは、デバイス固有のハードウェア情報を用いて乱数を生成する関数であり、デバイス固有の情報から秘密鍵を作成することが可能である。具体的には、昨年度設計したEven-Mansour暗号をベースに、公開置換の部分をホワイトボックス暗号、鍵生成部分をPhysically Unclonable Functionで設計した。本成果は、国際論文誌に投稿し、採択されている。
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