研究課題/領域番号 |
20K21798
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
桑門 秀典 関西大学, 総合情報学部, 教授 (30283914)
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研究分担者 |
廣瀬 勝一 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (20228836)
満保 雅浩 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (60251972)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 量子複製不可能性定理 / 対称暗号 / Groverアルゴリズム |
研究実績の概要 |
ユーザが使用するデバイスにディジタル情報をユーザに秘匿して内蔵しているアプリケーションは少なくない。このようなアプリケーションには、デバイスが解析されて、その秘密のディジタル情報が漏洩するリスクがある。このリスクは、メモリアクセス制限等の既存技術では排除できないことを示す実例がある。 本研究では、情報をディジタルではなく、量子状態で保存することで、量子複製不可能定理を根拠とする、情報の漏洩を原理的に防止できる方式の創出を目指す。2020年度は、デバイス内に量子状態で保存された情報を用いた秘匿通信を目的とした方式を考案し、安全性解析を行った。 具体的には、まず、任意の古典的な暗号文識別攻撃に対して、識別困難性が擬似ランダム関数の識別困難性に帰着することを示した。次に、攻撃者に与えられた量子状態に対して射影測定や一般化Groverアルゴリズムによる振幅増幅を行っても、解読に役立つ情報が得られる確率が非常に低いことを示した。さらに、与えられた量子状態に対して、一般化Groverアルゴリズムを用いた暗号文識別攻撃を行った場合、その量子計算量を無制限としても、識別成功確率が非常に低いことを示した。この方式の安全性は、攻撃者にとって、量子状態が未知であることを利用している。量子状態が未知であれば、量子複製不可能性定理により、量子状態を複製することができない。これにより、攻撃者がデバイスを一つ入手しても、攻撃できる回数は1回に限定され、攻撃の繰り返しによる攻撃成功確率の向上を防止できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子状態で保存した情報を用いた暗号方式を考案し、安全性解析を行った。その結果をまとめた論文をThe International Association for Cryptologic Research (IACR、国際暗号学会)のCryptology ePrint Archiveに投稿し、掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、秘匿通信に利用できる方式を考案した。2021年度は、認証通信に利用できる方式を考案するとともに、量子もつれを利用してデバイスに内蔵されている量子状態を破壊することにより、デバイスの無効化方式を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、国内外で開催予定だった学会・国際会議への出張を取りやめたことである。2021年度も、新型コロナウイルスの感染状況によっては、学会・国際会議がオンライン開催になり、出張旅費を予定通り執行できない可能性がある。その場合は、2019年の申請段階では予算の都合で購入を断念した機器や実験補助の増員などに予算を充てることを検討している。
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