研究課題/領域番号 |
20K21804
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡ノ谷 一夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30211121)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 意識の流れ / 多義刺激 / 多声音楽 / 拍子 / リズム / 脳波 / オンライン実験 / 注意 |
研究実績の概要 |
本研究は、多義音列や多声音楽を利用して、意識の流れと切り替えに随伴する主観体験と生理指標を測定し、意識の並列直列モデルを検討することを目的としている。 多義音列については、音高注意時と音長注意時で異なる拍子を感じうる多義刺激を作成した。注意の切り替えに関する脳波を計測するための準備として、刺激聴取時の主観的な拍子体験が実際に注意によって変化するかを検証した。注意すべき音響特徴(音高か音長)を被験者に教示してから刺激を呈示し、何拍子を感じたかを回答させる試行を繰り返したところ、注意を切り替えて異なる拍子を経験できることが示唆された。この結果を論文にまとめ、国際誌に投稿した。また、上述の行動実験で切り替えの精度が高かった被験者を対象に、刺激聴取時の脳波を計測する予備実験を行った。一方の音響特徴に注意した場合は拍子体験が安定するが、他方に注意した場合は拍子が維持できないように多義音列の規則性を操作すると、拍子が保てない際に特徴的な陰性電位が現れた。この電位は注意の切り替えと関連している可能性があり、今後被験者を増やして検討を深める予定である。 多声音楽を利用した研究については、視線計測装置のセッティングを行い、さらに1声の楽譜を読む際の視線計測実験を実施した。階層クラスタリング解析を用いて主観体験を樹形図として視覚化し、同じ旋律でも音楽経験の有無により主観体験が異なることを示唆した。同様の解析手法を用いて、多声音楽の楽譜を読む際の実験も実施できる段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究開始と同時に起こった新型コロナ感染症の拡大により、実験参加者を募って行う心理・生理実験の実施が著しく困難となった。緊急事態宣言等の隙間を縫って実験を進めているが、当初予定したほどの進捗は難しい。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルス禍でも可能な実験様式を検討し、オンラインでも実施可能な行動実験を工夫している。一例として、音脈分凝を引き起こす刺激を用いたリズム弁別課題によって、意識の切り替えに関連する主観体験の定量化を実施している。オンラインで十分な行動データを得た上で、コロナウイルス禍が収束次第、対面でしか実行できない生理計測を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究開始と同時に起こった新型コロナ感染症の拡大により、実験参加者を募って行う心理・ 生理実験の実施が著しく困難となった。コロナウイルス禍でも可能な実験様式を検討し、オンラインでも実施可能な行動実験を工夫している。今後、オンラインで十分な行動データを得た上で、コロナウイルス禍が収束次第、対面でしか実行できない生理計測を行う計画である。
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