研究課題
本研究では、コンピュータに強化学習により、線虫を目的の場所に向かわせるための刺激を学習させることを目的とした。後退を引き起こすASH神経に光遺伝学プローブ(ChR2)を発現させて、行動を記録しつつ機械が決定したタイミングで光刺激をし、後解像度を高く撮影した。このデータを使い、線虫の姿勢も含めて行動のモデル化を行なった。線虫の姿勢は主成分分析により、主要な5つの姿勢の線形結合として表現できることが知られている。この係数(a1;a5)の時系列を確率的生成モデル、MDN-RNN(混合正規分布-自己回帰ニューラルネットワークモデル)に学習させた。これにより、線虫行動の時系列が自動的に生成でき、さらに、混合正規分布で行動が自動的に分類されていることが分かった。このモデルをバーチャル線虫とし、その線虫に対して光刺激をコンピューターが行い、強化学習により設定したゴールに向かうよう学習を行わせた。その結果、学習により目的地に達することがよりよくできるようになることが確認された。次に再度実線虫に戻り、コンピュータが学習したタイミングで光刺激を行ったところ、実際の線虫はやはり設定したゴールに向かう傾向が見られた。以上より、線虫シミュレータが得られたことに加え、強化学習により、よりよい学習が得られたことが成果として挙げられる。
2: おおむね順調に進展している
強化学習の系が成功したため。
これまでの問題点として、線虫の中心線を正確に決めることが困難なため、線虫が丸まった姿勢をとったときには姿勢データが取れていなかった。中心線取得は過去に発表されたいずれの報告でも完全ではなかった。そこで、線虫連続画像から正確に中心線を得る方法を開発し、その結果をMDN-RNNに学習させることを試みたい。
線虫の中心線の取得のアルゴリズム作成に予想以上に時間がかかり、中心線データを取得しMDN-RNNモデルを学習させる過程が次年度に持ち越しとなり、そのための経費も持ち越しとなったため。
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