研究課題/領域番号 |
20K21807
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小池 英樹 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (70234664)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 視線誘導 / プロジェクタ・カメラ・システム / 画像フィルタ / 実世界プロジェクション |
研究実績の概要 |
本研究では,コンピュータ・ディスプレイ上に表示された画像に対して,画像フィルタを用いて極微小な加工を施したとき,眼による視覚と脳による知覚に若干の差があることに着目し,人に気づかれない視線誘導に関する基礎研究および実世界視線誘導への展開を試みる.今年度は,基礎実験のためのプログラム開発を行った.具体的には,コンピュータディスプレイ上に様々な画像を表示し,その時の被験者の視線を追跡する.表示される画像において,実験者が指定した領域(例えば,半径118pixel程度)は元画像のままとし,それ以外の領域は画像フィルタが適用される.画像フィルタとしてはガウシアンフィルタなど数種のフィルタが使用可能であり,そのフィルタ強度も自由に指定可能とした. 次に,作成したプログラムを用いて,画像フィルタを用いた視線誘導に関する基礎的な実験を行った.具体的には,被験者に強度の異なる画像フィルタを適用した画像を次々に提示し,その時の被験者の視線の位置を視線追跡装置で追跡した.実験の結果,被験者が明らかに気づくような強い画像フィルタがかかっている場合は,フィルタの適用されていない領域に視線が誘導された.さらには,被験者が気づかないような強度の画像フィルタに対しても,視線が誘導される場合があることが確認された.これは脳が認識していないにもかかわらず,視線が移動することを示唆している.今後は,被験者数を増やして,フィルタ強度と視線誘導の関係を客観的に明らかにしていくことを予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験のプログラム開発は順調に進んでいる.ただし,COVID-19の影響により,多くの被験者を招いた被験者実験を行うことが難しいため,現在は開発者による自己評価となっている.今後,COVID-19の状況が改善されれば,多くの被験者を招いた実験が行えると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
自然な視線誘導は確認することができたので,当初の計画にあるように,視線誘導の起こる画像フィルタの強度と,画像フィルタに気づく時の強度の関係を被験者実験で明らかにする.これと並行して,異なる種類のコンテンツへの適用を行う.具体的には,テキスト画像での実験を行う.文字が多く含まれるテキスト画像の場合,白い背景と黒い文字 とのコントラストが強いため,ガウシアンブラーを適用すると写真と違い容易に画像フィルタの存在に気づいてしまう.そこで,テキスト画像 に対しては,異なる画像フィルタが必要である.具体案としては,プロジェクタやインクジェットプリンタで良く見られる色滲み(color shift )を人工的に発生させることを考えている.こちらも同様に被験者実験により,客観的なフィルタ強度を明らかにしていくこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により学会発表ができなかったこと,被験者実験ができなかったこと,が主たる理由である.COVID-19の状況改善の場合,これらを積極的に行っていく.
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