小型霊長類のコモンマーモセットを実験環境下でなきかわす状況を設定し、その自由な状態での鳴き交わしを記録した。記録では、複数チャネルの音声とともに複数の映像を同期させながら、記録した。その他チャネル記録情報から、音源位置情報を推定させた。推定では、高速なアルゴリリズムの一種である、MUSIC法が実装された公開ツールHRAKを利用して、複数個体の音の定位を実施した。定位の評価では、映像と合わせながら、正しい動物個体位置がどの程度推定されているか、あるいは定位すべき場所が明瞭で正解位置がわかっているスピーカー音源をどの程度定位できるかなどの評価を行い、音源定位の制度について検討した。以上の結果、1)動物の音声よりも大きな背景雑音がない状況では、良い定位が得られること、2)音の一部でも単独で録音できた場合は、音源が正しく推定できること、3)実験室環境で整えた場合、定位が不安定となる状態になることが少なく、実験室での定位は非常にうまくいきそうなこと、が示すことができた。続けて、実際の鳴き交わしの場面での定位を行い、個体組み合わせと鳴き交わしの関連性(社会性と鳴き交わし頻度、パターンなど)を予備的に調べた。先行研究と類似した結果(視覚遮断があると音声の使用が変化することや、鳴き交わしの時間規則性が確認できること)が示された上に、著しい「個性」(ペアによって頻度が明瞭に違うこと)が発見でき、今後の新たな研究班展への資金石となった。
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