シリコン充填された人工筋肉で駆動する指について,これまでは1本の人工筋肉を指に埋め込んで駆動させていたが,本年度は複数の人工筋肉を指内に埋め込み,その性能評価を行った.特に,ただ単に増やすだけではなく,人の指と同様の構造である外在筋と内在筋と同様の役割をそれぞれの筋肉に持たせる事で,液冷による冷却を活かしながら,可動範囲を拡張することを実現した.人工筋肉は同じ特性のアクチュエータを作成することが難しいが,今回のように機能に違いを持たせた複数筋による駆動方法を用いる事で,各筋肉それぞれの特性を活かした構造とすることができる.人工筋肉単体では大きな力や変位を出力することが難しいが,複数を組み合わせる事で,利用範囲が拡大可能となる.一方で,チャンネル数が増えた事から,制御構造が複雑かしており,今後は複数の筋肉をどのように駆動させるかについての研究が必要となっている.得られた知見については,6月末に行われる学会ROBOMECH2023で発表予定としている. また,境界の液状層の摩擦特性への影響を調査し,異なる法線荷重および滑り速度における摩擦係数を実験により測定した結果,液状層を発生させた場合は動摩擦係数が約10分の1に低減し,特に滑り開始直後に大きな摩擦力を発生させる凝着の影響を大幅に抑制できることを確認した. 研究期間全体を通して,高分子のみで構成される指を構築し,また,それらを複数用いたハンドによる物体把持も実現することができ,かつ研究期間の間,毎年その成果を学会で公表することができた.シリコンオイルによって冷却性が上がるだけでなく,高分子のみで作成した指の摩擦を低減する効果もあり,液冷ハンドの可能性を示すことができたと考えている.特に,無音動作する指はこれまでほとんどないので,全く新しいロボットハンドの構築方法が提案できたと考えている.
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