研究課題/領域番号 |
20K21823
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
岩木 直 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 副研究部門長 (70356525)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | resting state fMRI / 統制の所在 / diffusion tensor imaging |
研究実績の概要 |
統制の所在(Locus of Control: LoC)は,日常的に本人が直面する現在の状況に至る原因が自分自身にあると考えるのか,あるいは他者や社会環境など自己の統制の及ばない外部にあると考えるのかを分ける教育心理学上の概念として知られる.本研究では,高解像度MRIで得られる脳構造と脳神経の解剖学的連絡,および安静時fMRIで得られる脳部位間機能結合データを統合的に用いて,個々人のLoCを推定するモデル(脳構造・脳機能連関デコーディング技術)を構築し,それを通して主観的なLoCを左右する神経学的特徴を明らかにすることを目的としている. 今年度は,昨年度に引き続き,本研究の着実な進捗のために,コロナ禍でのヒトを対象としたMRI実験を可能な限り安全かつ効率的に実施するための機関内の取り組みを主導した.本研究に関しては,高精度T1画像と,解剖学的神経結合指標としての拡散強調画像(diffusion tensor imaging: DTI),および安静時機能的結合を計算するためのresting-state MRI(rsfMRI)データの前処理を実施するとともに,それら用いて各実験参加者の個人特性を推定するデコーディングモデルの調査を行った.また,rsfMRIデータの解析技術に関して,広く用いられている脳地図(AALアトラス)を用いて脳領域間の機能的結合性を評価する技術を予備的に適用し,実験参加者の知覚パフォーマンスの変化や心身状態の主観的変化と高い相関関係をもつ安静時脳ネットワークを抽出することができることを示すなど,本研究から派生して,汎用性の高い個人の主観的感覚の評価技術の実現が可能であることを示唆する結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響が徐々に緩和され,ヒトを対象とした実験が増加するにつれてMRI装置の稼働率が急激に上昇した関係上,装置を利用できる時間が減少しデータ取得に遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
データ取得は大部分完了しているため,今後はデータの解析と可視化を進める.また,本研究に関連して取得したデータから,心身状態に関する主観的感覚とrsfMRIに基づく安静時機能結合との間に相関関係があることを示唆する新奇な結果が得られ始めており,これについても引き続き検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響が徐々に緩和され,ヒトを対象とした実験が増加するにつれてMRI装置の稼働率が急激に上昇した関係上,装置を利用できる時間が減少しデータ取得に遅れが生じている.次年度使用額は,2023年度にMRI実験でのデータ取得を加速するとともに,データ整理やデータ前処理を行う際の人件費として使用する.
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