研究課題/領域番号 |
20K21828
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (20511249)
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研究分担者 |
尾上 弘晃 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30548681)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 分子ロボット / 人工細胞 / DNAナノテクノロジー / ソフトマター / 非平衡系 / マイクロ流体工学 / ゲル / MEMS |
研究実績の概要 |
分子ロボットは、柔らかい材料(ソフトマター)であるDNAでできた、ナノからマイクロメートルの微小サイズのロボットで、生体内や環境中で情報をセンシングし、分子でコンピューティングし、プログラムされたタスクをこなす超微小ロボットとして期待されている。本研究の目的は、電波や赤外レーザーなどの電磁波によって、細胞型のDNA分子ロボットをリモートコントロール(遠隔制御)することである。分子ロボットは、生体内や環境中でセンシング・コンピューティングし、プログラムされたタスクをこなす超微小ロボットとして期待されており、その機能を最大限に発揮するために、電気・電子・情報システムとのインターフェースを確立し、コンピュータ制御が可能なミクロな生体分子ロボットの創成という技術革新を目指す。この目的のため、2020年度は、研究代表者・瀧ノ上は、DNAマイクロゲルを利用した分子ロボットのボディの構築をまず行った。このDNAマイクロゲルのリモートコントロールのため、DNAマイクロゲルへの金属ナノ粒子の導入手法の検討を行った。さらに、電磁波発生装置などリモートコントロール装置の構築を行った。研究分担者・尾上は、金属ナノ粒子に電磁波を照射することでマイクロゲル粒子を制御する技術の開発を行った。これらの技術によって、DNAゲルでできた分子ロボットを、電磁波によって遠隔的に制御できる可能性が見いだせた。次年度は、この技術を発展させ、プログラムされたタスクをこなすDNA分子ロボットへ発展させていくことを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者・瀧ノ上は、DNAナノ構造を集積させてDNAマイクロゲルを構築した。DNAマイクロゲルを電磁波で遠隔制御するため、金ナノ粒子をDNAマイクロゲルに導入する方法の検討を行った。また、遠隔操作のための電磁波として、物質透過性の高いマイクロ波領域の電磁波を選択し、金ナノ粒子導入DNAマイクロゲルにマイクロ波を照射するための実験系の構築を行った。 研究分担者・尾上は、酸化鉄ナノ粒子を封入したマイクロゲルビーズに赤外光領域の電磁波を照射することにより、局所的に温度を上昇させることに成功した。これにより、ゲルのメッシュサイズが変化して、ゲル内に担持されていた20nmのポリスチレンナノ粒子が放出されることを確認した。 以上のように、計画通り、着実に研究を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果を踏まえ、次年度以降も計画通り、更に発展させる。 具体的には、電磁波によるDNA分子ロボットの機能制御:電磁波受信→内部反応トリガーの2段階の反応を目指す。たとえば、電波により加熱されてカプセルを構成するDNAナノ構造で作った蓋が開き、外から物質を取り込ませて、内部の計算反応をスタートさせる機能などを検討する。また、機能化のため、ナノ粒子以外にも生体分子などの電磁波によるコントロールにも取り組む。電磁波受信から一連のタスク実行の遠隔制御:電磁波受信→内部反応→出力(タスク実行)のように3段階以上の反応を駆動し、一連のタスクを遠隔制御する。例えば、電波受信で蓋が開き、取り込んだ物質を使って別の分子を合成し、薬剤として放出するといった一連のタスクを検討する。通信し合うDNA分子ロボットによる群ロボットの遠隔制御も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAマイクロゲル用のDNA塩基配列の選定のために、コンピュータシミュレーションを行うことで、試行錯誤回数を減らし、効率よく実験を実施することができたため、次年度使用額が生じた。また、新型コロナ感染症の影響で、国内外の出張がなくなったため、申請書作成時よりも旅費に関して使用額が減った。次年度は、この次年度使用額をうまく利用することで、さらに多くのパターンのDNA実験をすることができる。具体的には、より効率よく制御できる安定性を持つDNAマイクロゲルのためのDNAナノ構造の研究を実施し、計画以上の結果を出すことを目指す。
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