研究課題/領域番号 |
20K21831
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
板口 典弘 慶應義塾大学, 文学部(三田), 助教 (50706637)
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研究分担者 |
吉原 将大 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (70822956)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 意味 / LDA / 自然言語解析 / 失語症 |
研究実績の概要 |
本研究では,自然言語解析に基づいた意味ネットワーク解析手法を開発し,脳損傷(失語症状)および加齢が,ネットワーク構造に与える影響を解明することを目指す。具体的には,(1) LDAを用いて日本語における単語間の客観的な意味連想関係を抽出・数値化する。次に,(2) 個人の意味ネットワーク構造の特徴を定量化する方法論を確立する。最後に,(3) 脳損傷・加齢による意味構造変容を定量化するとともに,それらを計算論的にモデル化する。 本年度は,ノルウェー語版Wikipediaに含まれている動物単語を対象としたネットワーク解析に基づき,アルツハイマー病患者,高齢健常者および若年健常者の言語流暢性課題成績を解釈した。具体的には,言語流暢性課題のエラーがどのような意味ネットワーク間の連想関係に基づいて,どのようなタイミングで出現するかを定量的に明らかにした。本成果は,Frontiers in Aging Neuroscience誌に掲載された。 また,日本人脳損傷患者に対する言語流暢性課題の連続実施をおこない,その継時的変化を明らかにした。特に,連続実施という方式を取り入れたことによって,これまで検討されてこなかった2つの時間軸における意味構造変化を明らかにすることができた。本成果は,高次脳機能研究誌に掲載された。本論文は日本語意味ネットワーク解析に基づいた結果を含んでいない。今後,リハビリテーションによってどのように意味構造が変化していくかを中心にした解析をおこない,その成果を発表していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ノルウェー語データの解析は当初の計画を超えた成果が得られた。特に,共同研究者との議論により,脳構造と言語流暢性課題の成績を定量的に結びつけることができた。また,日本語脳損傷患者のデータについても,当初予定を変更して,連続実施という方式を取り入れたことによって,これまで検討されてこなかった2つの時間軸における意味構造変化を明らかにすることができた。ただし,コロナウイルス対策により,日本人高齢者のデータ取得についてはできていない。
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今後の研究の推進方策 |
日本人高齢者の言語流暢性課題のデータ取得はWEBベースに切り替えて行っていく予定である。また,新たな提案した失語症患者の定量的な評価方法に基づいて,多数例の検討をおこなっていく。さらに,ノルウェー語データについても,既に解析済みである意味ネットワークと時間情報を統合した解析について論文化していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス対策関係により,学会発表・研究打ち合わせが滞った。そのため,出張用旅費が大幅に使用できなかった。2022年度は成果発表・研究打ち合わせが予定通り行える予定である。
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