今、常在細菌叢の全容解明に向けたメタゲノム研究が世界規模で盛んに行われているが、膨大な数に上る常在細菌叢の疾患への作用機構の全貌は未だに見えない。本研究課題では、最先端のオミクス計測技術とベイズ推論による最新の解析技術を駆使し、様々な疾患の原因となる細菌叢を効率的に探索するための「疾患関連細菌叢アトラス」を創出する。本研究で行うユニークなモデリング技術の開発とそれによる斬新なデータベースの構築により、細菌叢の大海原で研究者が遭難しないように「予測地図」を提供することが主たる目的である。2022年度は以下のような進展があった。1)疾病による常在細菌叢ダイナミクスを記述するベイズモデリング技術の開発:データの形式に依存せず多種多様なテンソルデータを統一的に解析するためのベイズ因子分解モデル(UNMF: unified non-negative matrix factorization)を開発し、シミュレーションデータおよび実データで有用性を検証した。以上の結果を国際学術雑誌 Briefings in Bioinformatics に投稿し、現在リバイス中である。2)データベースの構築と解析ツール群の開発:今年度に開発したベイズ因子分解モデル(UNMF)を大規模疾患関連コホート研究に適用できるように、スパコン上で並列化し、解析できるパイプラインを構築し、シミュレーションデータおよび実データで有用性を検証した。また、解析した結果をデータベース化するとともに、公共データベースに登録されたデータや研究協力者から提供されたデータを更新した。
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