研究課題/領域番号 |
20K21833
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 冬惠 京都大学, 情報学研究科, 特定准教授 (90534131)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | Internet of Things / マルチエージェントシステム / IoTサービス |
研究実績の概要 |
令和2年度では、「IoTネットワークのリソース割り当てメカニズムの実現」の研究課題を中心に実施した。IoT環境では、膨大なデバイスに関するIoTサービスの品質を保証するため、集中処理型のクラウドサーバーのほか、IoTネットワークに分散されるエッジサーバーが配備される。また、IoTサービスの状態やネットワークの状態が動的に変化する場合が多いため、タスク割り当てとリソース割り当てが非常に複雑になる。そこで、本研究ではまず協力マルコフ決定プロセス(Coalitional Markov Decision Process)というモデルを提案した。実際に協力マルコフ決定プロセスを用いてIoT環境の動的変化をモデリングし、IoTサービスに関するタスク実行要求に対して、分散エッジサーバー同士の提携行動により効用を最大化するようタスク割り当て手法を初期的に検討した。次に、IoTサービスを実行するための複合イベント処理を対象に、分散エッジサーバーにおけるリソース割り当て手法を実現し、IoT環境における複合イベント処理の応答時間に関する要求を満たすことを確認した。これらの主な成果は、サービスコンピューティングのトップ国際会議IEEE SCC 2020及び国際会議IEEE/WIC/ACM WI-IAT 2020において、3件の論文を発表した。また、「IoT環境のための大規模マルチエージェントシステムの構築」の研究課題では、IoT環境におけるスマートエナジーという実際の利用シナリオを想定し、初期的にマルチエージェントシステムを構築するための基本要素を抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、1.IoT環境のための大規模マルチエージェントシステムの構築、2.IoTネットワークのリソース割り当てメカニズムの実現という2つ研究項目から構成され、理論研究と共にIoT環境における実証研究を並行に実施する計画である。令和2年度では、研究項目2の理論研究を中心に実施し、研究項目1に関する初期的な検討を行った。IoT環境のための大規模マルチエージェントシステムの構築に関しては、当初は最初から一般化する大規模マルチエージェントシステムの構築に着目していたが、具体的な利用シナリオを想定せずシステムを構築することは困難である。そこで、IoT環境におけるスマートエナジーという実際の利用シナリオを考慮し、まず初期的にマルチエージェントシステムの基本要素を抽出した。以上の点から、研究項目1については、少し方針を変更したが今後の方向性を明確にしていると言える。IoTネットワークのリソース割り当てメカニズムの実現に関しては、IoT環境の特徴を考慮し、IoT分散サーバーへのリソース割り当て及びサーバーネットワーク上のタスク割り当てに関するアルゴリズムを提案し、その成果はサービスコンピューティングのトップ国際会議IEEE SCC 2020を含め、3件の論文を発表した。現時点で得られた成果は、今後のIoT環境における実証実験の基礎となるものであり、研究項目2に関しても当初の目標を達成したと考える。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では、課題1の「IoT環境のための大規模マルチエージェントシステムの構築」に関する検討を継続的に実施するとともに、現時点で得られる課題2の「IoTネットワークのリソース割り当てメカニズムの実現」に関する理論研究の成果を拡張する。まず、IoT環境におけるスマートエナジーという利用シナリオを想定し、実際にマルチエージェントシステムの構築を行い、多数のIoTサービスに関するエージェントによるインタラクションを扱うためのマルチエージェント意思決定メカニズムを実現する。次に、IoTネットワークの動的性とIoTサービスに関するタスク間の依存性を同時に対応するため、これまでに提案してきたリソース割り当てアリゴリズムとタスク割り当てアリゴリズムを拡張し、実際のIoTサービスを用いて評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、令和2年度では旅費や国際会議の参加に関わる費用の支出が大幅に抑えられたため、次年度使用額が生じた。令和3年度では、実証実験に関わるシステム構築とデータの整理について、大学院生3名をリサーチアシスタント・オフィスアシスタントとして雇用するための人件費を計上する。また、英文論文の英文校正費や国際学会参加費、書籍などの支出を予定している。
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