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2021 年度 実施状況報告書

ランドスケープモデルによる健康・疾患状態の可視化と予測

研究課題

研究課題/領域番号 20K21837
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

石川 哲朗  国立研究開発法人理化学研究所, 情報統合本部, 研究員 (90824160)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2023-03-31
キーワードランドスケープ / 慢性疾患 / 急性疾患 / 疾患の多様性 / 病態分類 / 予後予測 / 層別化 / 可視化
研究実績の概要

令和3年度は、これまで取り組んで来た慢性疾患データに対するランドスケープ分析として引き続き、1.睡眠リズム障害への応用、および、2.心不全データへの適用、そして、新たな対象疾患領域として急性疾患データへの適用として、3.新興感染症、特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のデータ分析にランドスケープを応用する研究を実施した。
【睡眠リズム障害研究】全国180箇所の保育園で0歳から6歳までの乳幼児約7000人から記録された睡眠票のデータを解析して、アプリやサービスに展開するための睡眠リズムを判定するアルゴリズムの開発を行なった。睡眠覚醒パターンの時系列特徴量として波形のシェイプに着目したアルゴリズムを考案し、ブラックボックスではない解釈可能な特徴を用いて説明性のある分類手法を構築した。これを応用すれば、発達に応じた典型的な睡眠パターンの推移をランドスケープとして表現することも可能であると期待される。
【心不全研究】心不全で従来用いられて来た病態分類をさらに個別化・精密化するため、ランドスケープの発想を応用した。状態の近い患者が多く存在する領域を密度情報を保ったままなるべく近くに配置して2次元布置を求め、クラスタリングすることで、患者の多様性を表現する新たな層別化を実現した。実際に見出されたクラスタごとに予後に違いが見られたことから、新規の病態分類をデータ駆動的に実現するのみならず、臨床的にも有用な情報を得られる展望がある。
【COVID-19研究】症状が急激に変化する急性疾患の分析への応用として、COVID-19の症状の多様性の可視化、および感染流行の早期予測に取り組んだ。症状の組み合わせのランドスケープから見出した新たな層別化は死亡リスクとの関連が見出され、感染者数のダイナミクスのランドスケープからは感染流行の兆候を見出す新たな表現方法として有望であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和3年度は当課題の対象疾患の研究の幅を広げ、慢性疾患としての睡眠リズム障害や心不全の多様性の理解、そして急性疾患への適用としてCOVID-19に関連する病態や感染状況をランドスケープの考え方や発想に基づいた状態の多様性を記述する方法論を確立する研究を推し進め、3件の記事を執筆し、2件の国際学会発表を含む7件の学会発表、1件の特許出願を行なった。特に今年度の飛躍としては、従来用いていた理論物理に端を発する特定のモデルに拘泥し過ぎず、より柔軟な発想でランドスケープのパースペクティブを体現するデータ駆動的な可視化や方法論をいくつか見出した点である。方法論を理論的に基礎付ける方向性、および各々の対象疾患ごとに得られた成果を論文にまとめて投稿する準備を精力的に進めている。

今後の研究の推進方策

健康・疾患状態の状態遷移や病態の多様性をランドスケープモデルが記述できることをデータ駆動的な手法を用いて、明確に具体例で示すPoCとなる論文を仕上げるのを令和4年度の目標とする。本研究計画に関連してさまざまなデータ解析を実施して来た実績に基づけば、幅広い応用先が見つかって来ていることは間違いのない事実であるため、その根幹となる原著論文をそろそろ世に問うてもよい時期に差し掛かっている。もちろん、研究が進むに連れ計画当初に想定していたよりも多くの検討事項や要求仕様(臨床現場からのニーズと期待)が生じているため、可視化や描画アルゴリズムのさらなる開発、アップデートやチューニングも同時に進めて行く。そのためには、手法が必ず備えるべき性質と、可能であれば満たすべきオプショナルな性質を切り分けて、前者から順に注力して研究開発を推進する必要がある。また、他のクラスタリング手法や可視化手法との比較を行い、ランドスケープのメリットやアドバンテージを浮き彫りにするとともに、必ずしもランドスケープで表現し切れない部分については相補的に組み合わせることで過不足なく情報を表現できるサポーティブな手法や組み合わせることでよりリッチな表現を可能とする応用方法を検討して行く予定である。

次年度使用額が生じた理由

令和3年度は学会参加が招待講演が多く、またCOVID-19感染症感染拡大のために研究打合わせ、国内および国際会議がすべてオンラインまたはハイブリッド開催となったため、旅費が発生しなかった。コロナ下のリモートワークを中心とした新しい働き方の模索を続ける中で、当初予定していたオンプレミスの計算機ワークステーションの導入を見送ったため。次年度はコロナが収束した場合には可能な範囲でオンサイト開催の学会や研究集会に参加して研究成果を発表するとともに、オンプレミスもしくはクラウド型の計算機環境の整備に使用することを予定している。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] University of California, Los Angeles(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of California, Los Angeles
  • [国際共同研究] Finnish Institute for Health and Welfare(フィンランド)

    • 国名
      フィンランド
    • 外国機関名
      Finnish Institute for Health and Welfare
  • [雑誌論文] 生活習慣病研究におけるAI・データサイエンス2021

    • 著者名/発表者名
      川上英良, 石川哲朗
    • 雑誌名

      医学のあゆみ

      巻: 278(5) ページ: 521-526

  • [雑誌論文] AIを用いた定量的かつ動的な転倒転落リスクの検出2021

    • 著者名/発表者名
      園部真也, 門脇水樹, 石川哲朗, 高屋英知, 菅原寛子, 中川敦寛, 植田琢也, 川上英良, 田畑雅央, 冨永悌二
    • 雑誌名

      医療の質・安全学会誌

      巻: 16(Supplement) ページ: 230

  • [雑誌論文] 人工知能(AI)と予防医学への応用2021

    • 著者名/発表者名
      川上英良, 石川哲朗, 大矢めぐみ
    • 雑誌名

      産業衛生学雑誌

      巻: 63巻臨時増刊号 ページ: 161

  • [学会発表] 睡眠覚醒パターンの発達特性をシェイプで読み解く2022

    • 著者名/発表者名
      石川哲朗, 華井明子, 加藤大吾, 小口真司, 川上英良
    • 学会等名
      第6回理論免疫学ワークショップ
    • 招待講演
  • [学会発表] New Analysis of Longitudinal Clinical Big Data with Artificial Intelligence -A Report from the CHART-2 Study-2022

    • 著者名/発表者名
      Takashi Shiroto, Kotaro Nochioka, Takuya Ueda, Tetsuo Ishikawa, Eiryo Kawakami, Jun Takahashi, Satoshi Miyata, Satoshi Yasuda, Hiroaki Shimokawa
    • 学会等名
      第86回日本循環器学会学術集会
  • [学会発表] Phenomapping for Classification in Chronic Heart Failure: From the CHART-2 AI Study2022

    • 著者名/発表者名
      Kotaro Nochioka, Satoshi Yasuda, Takuya Ueda, Taizen Tamori, Tetsuo Ishikawa, Eiryo Kawakami, Takashi Shiroto, Jun Takahashi, Satoshi Miyata, Hiroaki Shimokawa
    • 学会等名
      第86回日本循環器学会学術集会
  • [学会発表] Explainable machine learning (XAI) and mathematical methods in the COVID-19 prognosis and risk assessment.2021

    • 著者名/発表者名
      Tetsuo Ishikawa, Eiryo Kawakami
    • 学会等名
      RIKEN-Luxembourg Scientific Symposium: How to boost research collaborations through open data exchange.
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Mathematical methods and machine learning meet real-world data to stratify patients and predict disease onset and prognosis.2021

    • 著者名/発表者名
      Tetsuo Ishikawa, Eiryo Kawakami
    • 学会等名
      The 44th Annual Meeting of the Molecular Biology Society of Japan
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] AIを用いた脳内出血後のリハビリテーション転帰予測2021

    • 著者名/発表者名
      園部真也, 石川哲朗, 新妻邦泰, 植田琢也, 中川敦寛, 吉田昌弘, 川上英良, 冨永悌二
    • 学会等名
      第3回日本メディカルAI学会学術集会
  • [学会発表] アトピー性皮膚炎におけるデュピクセント治療マネジメント ~看護師のスキルとともに~2021

    • 著者名/発表者名
      野村有子, 八木澤美恵, 芦崎晃一, 石川哲朗
    • 学会等名
      アトピー性皮膚炎マネジメントフォーラム -患者理想を実現する診療-
  • [産業財産権] 疾患の臨床的転帰予測のためのシステム、プログラム、及び方法2022

    • 発明者名
      桜田一洋,川上英良,石川哲朗
    • 権利者名
      桜田一洋,川上英良,石川哲朗
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2022-009697

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公開日: 2022-12-28  

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