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2020 年度 実施状況報告書

地下生物圏探索のための岩石中への流体と微生物の隔離と流体個別採取に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K21839
研究機関東北大学

研究代表者

土屋 範芳  東北大学, 環境科学研究科, 教授 (40207410)

研究分担者 平野 伸夫  東北大学, 環境科学研究科, 助教 (80344688)
研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワード地下生物圏 / 流体包有物 / 海底噴気堆積鉱床 / 微生物隔離
研究実績の概要

本研究は,岩石内に微生物含有人工流体包有物を合成し,その流体包有物の個別流体を採取して,保存し,流体包有物中に含まれている流体中の微生物のシングルセルゲノム解析技術,ラマン分光によるDNA構造解析が可能かについて検討を行うことを目的としている.2020年度は,コロナ禍により,当初予定どおりの研究は行えなかったが,海底噴気堆積鉱床を形成するブラックスモーカーのモデルとして,秋田県黒鉱鉱床区でのチムニー跡から試料を採取し,微生物探索のための試料作り行った.
海底噴気堆積性鉱床は,海底下での熱水の噴出により硫化物が沈殿して形成される鉱床であるが,噴気に伴って形成されるシリカは,両錐石英であることが明らかとなった.このことは,噴気による急激な圧力減少が生じ,その結果,噴出された流体から自由空間(海水中)でシリカ鉱物(石英)が析出していることを示している.黒鉱鉱床と随伴する石英が両錐石英であること,さらに,同時に気泡が大量に発生し,その気泡の表面に,微細な黄鉄鉱が析出している.両錐石英の析出は,超臨界状態(おおむね400℃以上)の高温析出であり,これらの結果は,我々の研究チームが実験的に明らかにしている流体の爆発的膨張の結果生じるシリカ鉱物の形態と一致している.黄鉄鉱の形成温度は明確には求められないが,周囲の海水の急激な冷却の結果と推定され,おそらく200-100℃での低温析出ではないかと推定される.このことから,この気泡および黄鉄鉱の周辺部には,海洋底での特殊環境で生育していたバクテリアが付着していることが期待される.気泡―黄鉄鉱を含む薄片試料の製作に成功したので,次のステップとして,気体周辺に析出した黄鉄鉱周囲での生体反応(DNA解析)の発現を試みる.ここではタンパク質の熱分解温度以下に保持されている可能性が期待でき,海底噴気堆積性鉱床周辺部の生態の解明に繋がると期待している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は,流体包有物中に含まれている流体中の微生物のシングルセルゲノム解析技術,ラマン分光によるDNA構造解析を行うこととしていたが,この解析は,早稲田大学理工学術研究院生命医科学科の竹山春子研究室で実施する予定としていた.新型コロナウィルスの感染拡大防止措置により,東北大学から首都圏への出張は厳しく制限され,2020年度中は,東京での実験はできなかった.感染が比較的広がっていない秋田県においては,ほぼ目的の岩石試料,鉱石試料を採取することができて,試料の準備は整っている.コロナ禍がある程度収まって,首都圏との往来に関わる制限が緩和され次第,測定を実施したい.

今後の研究の推進方策

改定噴気堆積性鉱床ならびに海洋底チムニーに関しては,陸上サンプルを採取することができ,薄片などの測定用試料の作成ができた.黒鉱鉱床の薄片は,脆弱な鉱物のため作成は困難で,またそのニーズもなかったことから,これまでやられてこなかった.この研究で,黒鉱中の流体包有物を顕微鏡観察する必要から,黒鉱の薄片作成に初めて成功し,今後の研究の基礎的試料が整った.これを利用して,DNA解析などの測定を進めていきたい.また,2021年度は好熱細菌を岩石や黒鉱中に封じ込める,含バクテリア流体包有物の合成実験に取りかかることとする.

次年度使用額が生じた理由

本研究は,流体包有物中に含まれている流体中の微生物のシングルセルゲノム解析技術,ラマン分光によるDNA構造解析を行うこととしていたが,この解析は,早稲田大学理工学術研究院生命医科学科の竹山春子研究室で実施する予定としていた.新型コロナウィルスの感染拡大防止措置により,東北大学から首都圏への出張は厳しく制限され,2020年度中は,東京での実験はできなかった.
今後の使用計画は、黒鉱鉱床地域において更なるサンプリングを行うと共に,同様な環境を実験室内に作り,海洋底噴気堆積性鉱床の模擬環境でのバクテリアを含む流体包有物の合成実験を行う.爆発により急激な圧力低下(20-30MPa->0.1MPa),海水との接触による急激な温度低下(400℃->100℃),これらの激変環境を模擬し,バクテリアを含有した流体包有物合成実験と,その後のDNA解析実験を進める.また,温泉や地熱地帯に認められる各種のバイオマット(バクテリアの濃集帯)を採取し,その集積培養から,さまざまな好熱バクテリアの種の同定を進める.これらの実験と計測を通じて,地下生物圏の実態解明のその解析手法の確立を進めることとする.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Silica controls on hydration kinetics during serpentinization of olivine: Insights from hydrothermal experiments and a reactive transport model2020

    • 著者名/発表者名
      Ryosuke Oyanagi,Atsushi Okamoto and Noriyoshi Tsuchiya
    • 雑誌名

      Geochimica Cosmochimica Acta

      巻: 270 ページ: 21-42

    • DOI

      10.1016/j.gca.2019.11.017

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rapid fluid infiltration and permeability enhancement during middle lower crustal fracturing: Evidence from amphibolite granulite-facies fluid rock reaction zones, Sor Rondane Mountains, East Antarctica2020

    • 著者名/発表者名
      Diana Mindaleva, Masaoki Uno, Fumiko Higashino, Takayoshi Nagaya, Atsushi Okamoto, Noriyoshi Tsuchiya
    • 雑誌名

      Lithos

      巻: ー ページ: 105521-105521

    • DOI

      10.1016/j.lithos.2020.105521

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transport and Evolution of Supercritical Fluids During the Formation of the Erdenet Cu Mo Deposit, Mongolia2020

    • 著者名/発表者名
      Geri Agroli, Atsushi Okamoto, Masaoki Uno, Noriyoshi Tsuchiya
    • 雑誌名

      Geosciences

      巻: 10 ページ: 201-221

    • DOI

      10.3390/geosciences10050201

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A geochemical approach for identifying marine incursions: Implications for tsunami geology on the Pacific coast of northeast Japan2020

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Watanabe, Noriyoshi Tsuchiya, Shin-ichi Yamasaki, Yuki Sawai, Norihiro Hosoda, Fumiko W. Nara, Toshio Nakamura, Takeshi Komai
    • 雑誌名

      Applied Geochemistry

      巻: 118 ページ: 104644-104644

    • DOI

      10.1016/j.apgeochem.2020.104644

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fluid Infiltration Through Oceanic Lower Crust in Response to Reaction Induce d Fracturing: Insights From Serpentinized Troctolite and Numerical Models2020

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Yoshida, Atsushi Okamoto, Hiroyuki Shimizu, Ryosuke Oyanagi,Noriyoshi Tsuchiya, and Oman Drilling Project Phase Science Party
    • 雑誌名

      Journal of Geophygical Research

      巻: ー ページ: ー

    • DOI

      10.1029/2020JB020268

    • 査読あり
  • [学会発表] 流体のFlashingと岩石破壊2020

    • 著者名/発表者名
      土屋範芳
    • 学会等名
      日本鉱物科学会

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公開日: 2021-12-27  

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