研究課題
本研究は、従来の手法では観測が困難であった外洋域表層環境の微細スケール構造の実態を現場での直接観測により解明することを目的とする。本研究で対象とする表層環境は、風の吹送作用、波浪のストークスドリフトと砕波散逸の影響が直接及ぶ範囲で、近年海洋学の分野で注目され研究の進展が著しいサブメソスケールよりも1~2 オーダー水平スケールが小さく、潮目、波浪、ラングミュア循環等に伴う海洋表層の生物や物質の集積、分散に直接作用する海洋構造を対象とする。この微細な海洋構造を正確に直接観測するため、昨年度に、新たに水中ドローン (SEASAM/Notilo Plus社) を納入した。今年度は、この水中ドローンにメモリ式水温・塩分計を取付けて、次の海域において海洋表層の微細構造観測を実施した。(1)岩手県大槌湾内において、小型調査船「グランメーユ」で水中ドローンを操作し、水平200 m四方、表層から水深20 mの範囲内を、水平方向の解像度20 m、鉛直方向の解像度0.1 mで水温・塩分の3次元微細構造観測を実施した。(2)四国沖黒潮内側域において、学術研究船「新青丸」の作業艇で水中ドローンを操作し、水平1000 m四方、表層から水深50 mの範囲内を、水平方向の解像度100 m、鉛直方向の解像度0.1 mで水温・塩分の3次元微細構造観測を実施した。以上の実海域における運用試験により、無人潜水機を用いた外洋域表層環境の微細スケール構造観測の実現可能性を確認した。
2: おおむね順調に進展している
内湾域での小型船舶による運用試験、沖合域での大型船舶の作業艇を使用した運用試験を実施し、おおむね順調に進展している。
今年度実施した運用試験では、船上でGPS位置を受信し水平方向の位置決めを行ったが、次年度は、今年度に新たに納入したGPS搭載ブイSEASAM Navigator (Notilo Plus社) と水中ドローンを連携させて、予めプログラミングして設定した水平位置で自動的に鉛直プロファイル観測ができるシステムに改良し、実海域において試験観測を実施する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Progress in Oceanography
巻: 200 ページ: 102713
10.1016/j.pocean.2021.102713
Journal of Oceanography
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http://lmr.aori.u-tokyo.ac.jp/feog/kosei/photo.html