研究課題/領域番号 |
20K21845
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮本 達雄 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (40452627)
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研究分担者 |
阿久津 シルビア夏子 (AkutsuSilviaNatsuko) 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (10822299)
岩根 敦子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (30252638)
山本 卓 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (90244102)
松浦 伸也 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (90274133)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | UFB構造 / 集束イオンビーム-走査電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
遺伝情報を正確に娘細胞に伝達するためには、S期のゲノム複製とそれに続く分裂期での姉妹染色分体の均等分配が必須である。ゲノムDNAの大部分はS期で複製を完了するが、高度な繰り返し配列を含むセントロメア領域、テロメア領域や脆弱部位(fragile site)はG2/M期においても複製が継続されている。複製直後のこれらの染色体領域は、高度にDNAが絡まり合った状態(catenated)であり、正確な染色体分配には、DNAの“絡み”が解消(decatenation)される必要がある。正常細胞では、Catenated DNAはDNAヘリカーゼ活性をもつ分子(BLMやPICH)によってコートされ、ultra-fine bridge (UFB)構造が形成される。分裂期が進むと、Ⅱ型トポイソメラーゼがUFB構造に取り込まれて、DNAの“絡み”が解消されるとUFB構造も消失することで、正常な染色体分配が完了する。 我々は最近、電離放射線照射後の分裂期細胞のセントロメア間にUFB構造が発達することを見出した。しかし、UFB構造は極めて動的な構造であり、従来の電子顕微鏡による観察が困難であったために、その超微形態構造は不明のままである。また、UFB構造は、DAPIなど既知のDNA染色剤では検出できないため、通常のクロマチン構造とは異質な形態特性をもつことが示唆される。本研究では、これらの分裂期UFB構造の超微形態構造の形態特性を明らかにすることを研究目的としている。 2020年度には、集束イオンビーム-走査電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いたUFB構造を観察するための細胞調製法とUFB構造を蛍光標識する発現ベクターを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度には、集束イオンビーム-走査電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いたUFB構造を観察するために、ヒト正常網膜色素由来細胞株hTERT-RPE1細胞株の固定法などの細胞調製法を確立した。また、UFB構造に局在するPICHやBLMと融合した蛍光タンパク質をする発現ベクターを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には、UFB構造に局在するPICHやBLM融合蛍光タンパク質をする恒常発現するhTERT-RPE1細胞を作製して、放射線照射後に誘導されるUFB構造をFIB-SEMを用いて観察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、FIB-SEM観察が予定回数より下回ったために次年度使用額が生じた。2021年度以降に、FIB-SEM観察回数が増えることが予測され、その分の経費として執行していく予定である。
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