研究課題/領域番号 |
20K21847
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
今岡 啓治 山口大学, 情報基盤センター, 准教授 (50725869)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | GNSS / 水蒸気 |
研究実績の概要 |
車載型の低コストGNSS受信機を用いた高密度な水蒸気観測網構築の可能性検討のため,電子基準点との比較による天頂大気遅延量推定精度と誤差要因の評価,高層気象観測との比較による可降水量推定精度の直接検証,並びに車載状態における誤差評価の順に研究を進めている.令和3年度は,固定点における天頂大気遅延量推定精度における誤差要因の評価,ラジオゾンデによる高層気象観測との比較観測,及び試験的な車載実験を実施した.測量級または低コストアンテナの受信信号を分配して測量級・低コスト受信機に同時入力し,誤差に対するアンテナと受信機の寄与を評価した結果,受信機による顕著な違いは見られなかったが,低コストアンテナを用いた際に差を生じる傾向があった.現在,測量級アンテナを基準とした位相中心変動の相対補正による効果を検証中である.続いて,気象庁松江地方気象台に低コストシステムを設置させていただき,同台のラジオゾンデによる高層気象観測,および近隣の電子基準点データとの比較を開始した.現在までに得られた冬季のデータでは可降水量の範囲は限られるが,電子基準点データから推定した可降水量と遜色のない精度を示している.低コストシステム単体の試験的な車載測定によりデータ取得等の確認は実施できたが,比較データを得るための測量級システムの同時搭載や,車両の位置・視界等を考慮した適切な走行ルート・停車場所の設定が不足しており,詳細な評価には至っていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
松江地方気象台における高層気象観測との比較実験を開始し,可降水量の良好な精度を確認しつつあるなど進展は認められるが,計画よりも車載実験の遅れがあり,全体の研究進捗達成度としてはやや未到達と言える.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,高層気象観測との比較による可降水量直接検証の継続,アンテナ位相中心変動の相対補正の評価,及び詳細な車載実験を実施する予定である.松江地方気象台におけるラジオゾンデ比較実験を継続して可降水量の評価範囲を60 mm程度まで広げて精度を検証するとともに,測量級アンテナを基準とした位相中心変動特性の相対補正の効果を検証する.車両に測量級・低コスト受信機システムを併設して車載実験を実施し,移動体の位置・姿勢安定性,および受信状態が天頂大気遅延量推定に与える影響を評価する.得られた結果を整理し,車載型低コストGNSS受信機システムによる高密度観測網の構築に関して得られた知見をまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表のために旅費を計上していたが,オンライン開催のため不要となり松江地方気象台への低コストシステム設置に係る追加の物品購入等に充てたことにより差額が生じた.令和4年度では,研究発表のための旅費として使用する予定である.
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