研究課題/領域番号 |
20K21848
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
竹川 暢之 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (00324369)
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研究分担者 |
飯田 健次郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (50540407)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | エアロゾル / 新粒子生成 / 核生成 / 雲凝結核 / 粒子帯電率 |
研究実績の概要 |
大気エアロゾル粒子は、雲凝結核 (CCN) として作用することで放射収支に影響を与える。CCN数濃度を決める要因として気体分子からの新粒子生成が鍵となる。本研究では、新粒子生成の新しい検出方法および解析方法の開発に取り組んでいる。当該年度は、実大気観測およびデータ解析に向けた体制を整備することを主な研究内容とした。 東京都立大学では、超微小凝縮粒子カウンタ (UCPC) および凝縮粒子カウンタ (CPC) の整備・性能評価を実施した。検出効率が一定と見なせる粒径 (50 nm) でUCPCとCPCの相互比較を行い、粒子数濃度が誤差の範囲内で一致することを確認した。さらに、データを解釈するための粒子成長理論モデルの構築を行った。このモデルは、核生成、凝集、凝縮・蒸発などのプロセスを計算可能であり、化学種は二成分 (硫酸と有機物) を考慮することができる。過去の観測に基づき幾つかのテストケースで計算を実施し、新粒子生成に伴う粒子成長過程を再現できることを確認した。 産業技術総合研究所では、粒子径増幅型粒子カウンタ (PSM) および粒子帯電率測定装置の開発を実施した。PSMの粒子検出部として、CPCの代わりに光学粒子カウンタ (OPC) を用いる構造とした。実験室においてPSM-OPCシステムの評価を実施し、検出最小粒径として約1 nmを達成し、粒径2 nm程度以上で検出効率がほぼ一定となることを確認した。また、観測時に想定される高濃度領域まで定量できることを確認した。帯電率測定装置については、ハードウェアの基本的な試作を完了するとともに、制御プログラミングの開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の計画では、分析装置を大気観測用として完成させるとともに、データを解釈するための理論モデルの開発を行うことを目的とした。都立大ではUCPCおよびCPCの整備と理論モデルの開発、産総研ではPSMおよび帯電率測定装置の開発を担当しており、おおむね当初予定通りの研究内容を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
構築した理論モデルにイオン衝突反応を組み込むとともに、帯電率計測システムの制御プログラミングを完成させる。夏季は光化学反応が活発であり、核生成で重要な硫酸の生成速度が大きいと期待される。このため、2021年8月につくばの産総研敷地内で大気観測を実施する計画とした。2021年度後半にデータ解析を行い、本研究の主たる対象である遅い粒子成長イベントの検出可能性について議論する。これらの結果を踏まえて、当該手法が将来的に航空機を用いた観測に発展できるかどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で往来が制限されたために、打合せ等はオンラインで実施可能な事項に限定し、旅費の支出は行わなかった。また、2021年度に産総研で実施予定の大気観測の具体的な時期が不確実であったため、観測に必要な消耗品の購入を保留としていた。以上の理由により次年度使用額が生じたが、研究全体として大きな遅れを生じるものではない。これらの経費は、2021年度のできるだけ早期に対面での打合せを行うための旅費として使用するとともに、観測に必要な物品を購入するための物品費として使用する。
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