研究実績の概要 |
本研究では,バイオマスとタンパク質を組み合わせることで都市鉱山からの貴金属の回収が可能なバイオベースの金属イオン吸着剤を開発する。 昨年度の研究において,金結合タンパク質(AuBP)と多糖結合モジュール(CBM)を融合した融合タンパク質AuBP-CBMを作製し,そのAu3+吸着機能が確認された。そこで本年度は,様々な融合タンパク質のラインナップを作製し,そのセルロース吸着機能および金属吸着機能を調査した。融合タンパク質の作製の過程において,遺伝子構築およびタンパク質発現に成功したものを用いてその後の実験を行った。AuBP-CBMをベースタンパク質として,CBMのN末端およびC末端の両方にAuBPを配置したAuBP両端型,AuBP-CBM を2つ連結したCBMタンデム型を作製した。これら3つの融合タンパク質のセルロース吸着性および金属結合性はそれぞれ異なったが,最終的な効率を示すセルロースあたりのAu3+回収率はAuBP両端型が最も高かった。また,X線光電子分光法(XPS)により,セルロース上に吸着したAuがAu(0)であることを確認した。AuBP両端型を固定化したセルロースは,白金族および遷移金属(Au, Pt, Pd, Cu, Co, Ni, Zn)を含む溶液中からAuを高選択的に回収することが可能であり,セルロース上のAuはチオ尿素を用いて89%脱着することができた。この際,AuはAu+に酸化され,チオ尿素と錯体を形成したと考えられる。 また,ろ紙以外のセルロース材料として,高機能性材料として注目を集めているセルロースナノファイバーの利用を検討した。タンパク質の吸着性について調査したところ,ろ紙よりも3倍以上の高い吸着性を示すことが明らかとなった。
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