研究課題/領域番号 |
20K21854
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
小畠 秀和 弘前大学, 地域戦略研究所, 准教授 (10400425)
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研究分担者 |
井上 晴彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (10435612)
塚本 勝男 大阪大学, 工学研究科, 招へい教授 (60125614)
桐原 慎二 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (60519594)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | カルサイト / 分解 / その場観察 |
研究実績の概要 |
現在,天然資源に漁獲を左右される不安定な海面漁業から,比較的生産が安定する養殖への転換が進んでいる.しかし,養殖漁業では貝殻などカルサイトを主成分とする大量の水産廃棄物が生じる.これらカルサイトの大部分は1200℃以上の温度で大量の燃料と費用を消費しながら焼却処分されており,青森県だけでも年間約7億円の経済的負担となっている.本研究の目的は,炭酸カルシウムの分解を促進する細菌の活動を利用することで燃料消費によるCO2を排出しない低温での貝殻の処理プロセスを開発し,省エネで持続可能な水産業の構築をめざす. 本年度では,高温での炭酸カルシウム熱分解と細菌を利用した炭酸カルシウムの分解の速度の違いを定量的に評価するため,1) CO2雰囲気を制御した熱分解速度測定と2) 細菌の有無による炭酸カルシウムの分解プロセスの違いについて実験的に調べた. CO2雰囲気を制御したカルサイト熱分解速度測にはDSCを用いて測定した.昇温速度を変えながら熱分解反応が終了する温度を測定することで、CO2雰囲気下(1vol.%)での熱分解反応の活性化エネルギーおよび頻度因子の決定を試みた. また細菌による炭酸カルシウムの分解プロセスを明らかにするための試みとして,細菌を培養した環境および、培地のみ環境下に炭酸カルシウム(ホタテ貝の貝殻)を加え一定期間放置した.その後これらの試料を取り出しSEMによる観察を行った.培地のみの環境下においた炭酸カルシウムには目立った組織変化が見られなかったものの,細菌を培養した環境下においた炭酸カルシウムにはエッチピットの形成など溶解が進んだ痕跡が見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究においてバクテリアによって分解されたカルサイトの組織を観察することができた。また従来行われてきた貝殻の焼却処分を模したCO2雰囲気下でのカルサイト熱分解速度測定を行い、本プロセスでのエネルギー収支の比較に必要な熱分解プロセスに必要なエネルギーを見積もる実験を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度ではさらに細菌の生息する環境でのカルサイトの分解過程を光学的手法によるその場観察によって明らかにするための実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響のため研究打合せを行うことができず,光学セルの選定を延期することにした.2021年度では前年度の知見を踏まえその場観察に必要な光学セルの窓材の購入に使用する予定である。
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