低温条件でプラスチックの合成ガス化が可能となれば、プラントから排出される低温廃熱が、プラスチックガス化プロセスに融通できるようになるため、化石資源の燃焼が不要なリサイクルシステムが実現できる。本研究では、低温プラスチック分解プロセスを通じた革新的ゼロエミッションケミカルリサイクルシステムを提案する。 初期検討の結果、まず廃プラスチックの無触媒熱分解による軽質炭化水素化を行い、その後ケミカルループ型プロセスにより、炭化水素を改質する、2段階ガス化システムが妥当であるという結論に至った。 本研究において、プロセスの設計に必要な、酸素キャリアの酸素吸蔵・放出能のみならず、それに伴う反応熱量を取得し、ケミカルループ型プロセスの採用により、大きな吸熱を伴う炭化水素改質反応が、比較的小さな吸熱反応2つに分割されることを明らかとし、本プロセスの熱力学的有意性を示した。さらに種々の炭化水素改質の反応を実施し、ケミカルループ型の炭化水素改質プロセスが500℃で進行可能なことをラボスケールの反応装置で実証した。 最終年度においては、本プロセスに不可欠な酸素キャリアナノ粒子の安定性評価を実施し、酸化セリウム系では水蒸気環境において焼結を伴う劣化が著しく進行することを明らかとするとともに、白金族金属の添加や異種ナノ粒子との混合が焼結を抑制することを見出し、劣化抑制のためのナノ粒子設計指針を構築した。ナノ粒子の焼結抑制は、粒子間の物質拡散が表面のナノサイズの異種粒子により阻害された結果であると考えられる。
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