本研究で提案したプロセスによりアルミニウムドロスを簡易に無害化することができ、そこでは温水にアルミニウムドロスを浸漬処理することで、アルミニウムドロスに含まれる金属アルミニウムと窒化アルミニウムを水酸化アルミニウムに改質することができることがわかった。改質により得られる水酸化アルミニウムは1gあたり約100m2もの比表面積を有しており、アルミニウムドロスに元々含まれる酸化アルミニウムやMgAl2O4の表面に析出生成していることがわかった。またこの改質ドロスは酸素共存下において硫化水素を硫黄に酸化することができることが新たにわかった。反応機構の詳細を明らかにすべく様々な条件で試験を実施したところ、水酸化アルミニウムによる触媒酸化であると示唆された。一方でアルミニウムドロスの湿式処理プロセスで発生する副生廃液の発生原単位削減のため、副生廃液の循環利用試験も実施した。そこでは、副生廃液を最大9回繰り返し利用してもアルミニウムドロス中の金属アルミニウムと窒化アルミニウムを初期条件と同様に水酸化アルミニウムへ改質可能であることが分かった。また得られる水酸化アルミニウムの比表面積も循環利用回数によらず高い値を示すことが分かった。さらに副生廃液を循環利用して得られた改質ドロスを用いた硫化水素除去試験を行ったところ、いずれの改質ドロスにおいてもほぼ同様の硫化水素除去能が示された。これらの結果より、副生廃液を循環利用したアルミニウムドロスの湿式処理により得られる改質ドロスを硫化水素除去材として製品製造する廃棄物原料型機能性材料プロセスを提案することができた。
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