研究課題/領域番号 |
20K21862
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
北澤 君義 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (90143825)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 廃棄金属筐体 / コールドリサイクル / 延性蘇生 / インクリメンタル平坦化 / 変形集合組織 / 曲げ性 / アップグレード |
研究実績の概要 |
廃棄金属筐体を熔解せずに室温状態で塑性変形させて平板に戻すコールドリサイクルが可能になれば,熔解過程を経ないため,エネルギー消費量と温室効果ガス排出量が共に激減する.しかし,コールドリサイクル板は,加工硬化部の低延性によりその再成形は難しい.もし,低延性の原因である変形集合組織がコールドリサイクル中にランダム化すれば,コールドリサイクル板の再成形の際に生じる微小割れはその初期段階で成長が停止するはずである.本研究はこの延性蘇生の新学理(変形集合組織のランダム化による微小割れの停止機構)の実験的解明を通して,不可能とされている廃棄金属筐体の延性蘇生コールドリサイクルの可能性に挑戦する. 硬質アルミニウム板の90°V曲げ成形により製造された筐体を,インクリメンタル平坦化法を適用して均一板厚の薄板へコールドリサイクルした.そして,コールドリサイクル条件としてインクリメンタル平坦化条件(プラネタリーロールの回転数,クリアランス,ダイ溝形状等)を取り上げ,アルミニウムコールドリサイクル板の曲げ性(180°ヘミング)に対するインクリメンタル平坦化条件の影響を実験的に探った.その結果,変形集合組織のランダム化の制御因子と考えられるインクリメンタル成形ピッチを小さくすることにより,コールドリサイクル板の曲げ性が素板(筐体製造前段階の薄板)よりも向上「アップグレード」することが実験的に明らかになった.金スパッタ法を適用して曲げ稜線上の新生面のモルフォロジー観察を行った結果,予想通り,インクリメンタル成形ピッチが小さくなるに従い,稜線上の微小割れの成長が停止することが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想どおり,コールドリサイクル過程のインクリメンタル平坦化における変形集合組織のランダム化の制御因子と考えられるインクリメンタル成形ピッチを小さくすることにより,コールドリサイクル板の曲げ性が素板(筐体製造前段階の薄板)よりも向上することが実験的に明らかになった.また,金スパッタ法を適用した曲げ稜線上の新生面のモルフォロジー観察結果からは,インクリメンタル成形ピッチが小さくなるに従い,予想どおり,稜線上の微小割れの長さが短くなり,微小割れの成長が停止することが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
延性蘇生の機序をEBSD観察の観点からより深く探るとともに,硬質アルミニウム板の廃棄筐体で明らかになったインクリメンタル平坦化中の変形集合組織のランダム化の発現が,アルミニウム合金等の他の廃棄金属筐体においても成立するのか否かにも注力して,コールドリサイクルにおける延性蘇生の機序の解明を進める.
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