研究課題/領域番号 |
20K21865
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
鈴木 祐麻 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00577489)
|
研究分担者 |
隅本 倫徳 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40414007)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 土壌汚染 / 重金属 / 二酸化チタン |
研究実績の概要 |
土壌・底質に含まれる金属酸化物が効果的に重金属を収着し、その結果、重金属類の環境内挙動に影響を与えることは幅広く知られた知見である。しかし、二酸化チタンが重金属を効果的に収着することは知られているものの、土壌科学分野のほとんどの報告は酸化鉄あるいは酸化マンガンに着目している。その結果、重金属による土壌汚染における二酸化チタンの重要性を議論した研究例は数少ない。そしてこれらの数少ない研究例は、アナターゼが土壌・底質中において重金属の挙動に大きな影響を与えることを示唆しているが、知見の蓄積は不十分であるのが現状である。そこで、研究1年目の今年度は、 1) デキシーカオリナイトと試薬のアナターゼへのプロトンとカドミウムの吸着現象を内圏錯体と外圏錯体を組み合わせたモデルを用いてモデリングすること、2) 得られた錯体定数を用いてカドミウムの溶出濃度を予測すること、そして3) 塩分濃度がカドミウムの溶出性に与える影響を定量的に評価すること を目的として実験を行った。そして、塩分はカオリナイトからのカドミウムの溶出に大きな影響を与えるが、アナターゼを多く含む土壌からは溶出量が大幅に低減されることが明らかになった。
来年度以降に実施する項目としては、1) モンモリロナイトなどのカオリナイト以外の粘土鉱物を対象として、二酸化チタンの重要性を明らかにすること、2) 結晶面が露出したアナターゼ結晶を合成して結晶面ごとに異なることが予想される重金属との親和性を評価すること などが挙げられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で研究室に入室できる学生の数に制限がかかったため、今年度に実施する予定であったテーマ「モンモリロナイトなどのカオリナイト以外の粘土鉱物を対象として、二酸化チタンの重要性を明らかにする」が十分に検討できなかった。また、テーマ「結晶面が露出したアナターゼ結晶を合成して結晶面ごとに異なることが予想される重金属との親和性を評価すること」についても、今年度のうちに結晶面が露出したアナターゼ結晶が合成できる条件について予備実験を行っておく予定だったが、同様の理由で十分に検討できなかった。これらの理由から、「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
【テーマ1】モンモリロナイトなどのカオリナイト以外の粘土鉱物を対象として、二酸化チタンの重要性を明らかにする 当初の計画では研究期間1年目に実施することになっていたテーマであったため、早急に実施するが、カドミウムのみならず他の重金属類である鉛やヒ素についても実施したいと考えている。また、土壌の種類については、モンモリロナイトやイライトも評価することにより、カオリナイトのみならず幅広く環境に存在する種々の粘土鉱物に関する知見を得る予定である。
【テーマ2】結晶面が露出したアナターゼ結晶を合成して結晶面ごとに異なることが予想される重金属との親和性を評価すること 当初の計画では研究期間1年目に予備実験を行い、結晶面が露出したアナターゼ結晶が合成できる条件をある程度絞っておく予定だったことを踏まえて、早急にこのテーマにも取り組む。若干取り組んだ実験からは、文献に記載されている条件では求める生成物が得られないことが分かっているため、反応時間や濃度、そして冷却速度などの因子を変化させながら結晶面が露出したアナターゼ結晶の合成を目指す。また、他のアプローチとして、文献に報告されている方法に基き、合成したアナターゼ粒子を濃硫酸などに晒すことにより目的とする結晶面を露出させることも検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスにより研究室に入室する人数に制限がかかり、実験が計画通りに進行しなかったため、次年度使用額が生じた。2021年度には、重金属の粒子への吸着実験データのモデリングができる化学平衡計算ソフトウェアMINEQL、そしてアナターゼを合成するための高圧反応器を購入する予定である。
|