研究課題/領域番号 |
20K21869
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
長濱 峻介 京都先端科学大学, ナガモリアクチュエータ研究所, 助教 (70754745)
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研究分担者 |
菅野 重樹 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00187634)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / 分解 / 人工循環系システム / 物質供給 / 状態維持 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、山や海などの環境で自立・自律的に活動するロボットが故障した際に、自発的に構造を分解する機能を付与することで、環境中でのロボットの残留を防ぎ、環境負荷を低減する仕組みを実現することである。また、分解するのみであれば不安定な材料を使えば良いが、ロボットの活動中にも分解する可能性があるので、材料の構造を維持し安定化する技術も同時に開発する。それらを実現する手段として、本研究では材料の内部に循環系システムを組み込み、循環系を介して材料に物質供給することにより材料の維持や分解を行う。 今年度は、1MPa程度の強度を有するイオン架橋ハイドロゲル材料の内部に循環路を形成し、水分を供給することで構造の乾燥の抑制による構造維持(安定化)を行い、キレート剤を供給することで構造の分解(不安定化)を行った。イオン架橋ハイドロゲル材料に関しては、ゼラチンゲルを足場としてアルギン酸ナトリウムゲルの重合を行うことで得た。キレート剤を含んだ溶液に浸漬することで、構造が破壊され分解することを確認した。また、3Dプリンタを用いて流路のパターンを有する型を製作し、その型を用いてハイドロゲルを重合した後、シアノアクリレートを用いてゲル同士を接合することで、流路を備えたハイドロゲルを作製した。その後、得られたハイドロゲルにポンプを接続し、水およびキレート剤の供給を行った。水やキレート剤がハイドロゲル内部を流れていることは確認できたが,物質の供給量の問題などで乾燥を完全に抑制することや構造を完全に分解することはできなかった。今後、ハイドロゲル中の循環路の構造を変更するなどして、長期間の状態維持や完全な分解を実現していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにイオン結合による1MPa程度の高強度ハイドロゲルを製作しキレート剤の供給により分解すること,および型と接合によるハイドロゲル内部への物質の供給網である循環路を製作することを達成した。これらが実現できたことで、提案している研究の骨格が完成した。
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今後の研究の推進方策 |
【今後の推進方策】今後は、水やキレート剤を十分に供給できるようにすることで、構造の維持と分解を行うことが可能なシステムを実現していく。具体的には、循環路の構造を見直すことで、安定と不安定化を円滑に行えるようにしていく。 【研究を遂行する上での課題】早稲田大学から京都先端科学大学に予算を移すことで、10万円以上の物品に関しては研究計画と関係が無いメンターの許可を取らないといけなくなり、物品の調達が難しくなった。また、大型の物品の置き場を確保できず、大学への装置の設置が不可能になるなど、研究遂行上で早稲田大学には無かった問題が多く存在することが明らかとなった。早稲田大学にも籍を置いているため、基本的には消耗品のみを科研費で購入し、装置等に関しては早大にある別の予算で購入することで研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費を移管した京都先端科学大学の研究環境が早稲田大学とは大きく異なることで、実験補助者を雇用できなかったり、10万円以上の装置の導入が困難となったりと、想定していなかった事態が生じている。もう一つの所属先である早稲田大学と連携することで、可能な限り研究を円滑に進めていく予定である。
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