研究課題/領域番号 |
20K21874
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
森田 英嗣 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (70344653)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 被膜ナノ粒子 / レイトドメイン / 出芽 / ワクチン開発 / CTL誘導 |
研究実績の概要 |
数メガダルトンから成る巨大蛋白質粒子を、細胞外へ出芽させ被膜させる方法を確立する。またその際、生体膜に膜透過型蛋白質リガンドを取り込ませ、適切な細胞に微粒子を送り込む方法の確立を目指す。本研究では、この方法を用いて鶏卵白アルブミン(OVA)抗原を被膜粒子に取り込ませ、細胞性免疫誘導ワクチンとして機能するか検討する。R2年度は、正二十面体を形成する微粒子ferritin、lumazine synthase、EncapslinのN末端側にミリストイル化配列配列、C末端側にヒト免疫不全ウイルスのGag p6レイトドメインを付加した発現ベクターを、哺乳動物培養細胞に発現させ、細胞外に効率よく出芽させることに成功した。また、蛋白質微粒子を発現させる際に、VSV-G(水疱性口内炎ウイルスGタンパク質)を同時に発現させ、これら因子を表面に提示する被膜粒子形成方法を確立した。さらに、OVA抗原内包被膜微粒子を作製し、それを取り込ませたマウス樹状細胞に、carboxyfluorescein succinimidyl ester(CFSE)ラベルしたOT-1マウス由来T細胞に反応させたところ、CD8+T細胞の増殖が確認された(Kimura et al. Vaccine, 2021)。これらの結果は細胞から出芽させた巨大蛋白質微粒子が、ワクチン抗原を標的細胞の細胞質に効率よく送達させることが可能なDDS(ドラッグデリバリーシステム) 技術として応用できることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
被膜微粒子を出芽・放出させることに成功している。また、モデルワクチン抗原を取り込ませて、樹状細胞の細胞質に送達できることも検証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.微粒子を効率よく細胞から出芽させる方法の確立:R3年度は、微粒子に融合したレイトドメインをウイルス因子ではなく、細胞側の因子であるHRSやTSG101のC末端ドメインを付加するなど、より効率よく出芽させることが可能なレイトドメインの検索を行う。 2.被膜微粒子に膜透過型リガンドを取り込ませる方法の確立:これまでに、VSV-G(水疱性口内炎ウイルスGタンパク質)を同時に発現させ、これら因子を表面に提示する被膜粒子形成方法を確立している。同様の方法を用いて、インフルエンザウイルスのHA-NA、SARS-CoV-2のスパイク蛋白質をリガンドとして取り込ませた被膜微粒子の作成を試みる。これら被膜微粒子がワクチン抗原を樹状細胞の細胞質に送達できるか検証する。 3.被膜微粒子の細胞性免疫誘導ワクチンとしての可能性について検討:R3年度はSARS-CoV-2のヌクレオキャプシド蛋白質を取り込んだ被膜微粒子を作成し、SARS-CoV-2感染を抑制するワクチンとして機能するか検証する。被膜微粒子をハムスターに接種したのち、SARS-CoV-2感染による体重減少をモニターし、感染予防効果があるかどうか調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であった消耗品類について、前年度までに研究室に備蓄されていたもので賄うことができたため。今後の研究進行上必要となる顕微鏡関連の物品と消耗品の購入に使用する予定である。
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