研究実績の概要 |
本年度の実験研究では、主な研究対象をゼブラフィッシュと線虫とし、腸内流動と腸内細菌挙動、物質吸収を可視化計測した。数理では、4つの保存則を連立することで細菌の周囲環境を予測し、腸内フローラの時空間発展を記述した。本年度の主な研究実績は、以下の通りである。 1.大腸菌などの細菌が、流れ中でストリーマーと呼ばれるバイオフィルムを形成する現象に着目し、その数理モデル化を行った。複雑流路内に形成されるストリーマーの形成過程を、細胞スケールからメゾスケールで計算した。そして、マクロなレオロジー特性とストリーマー形状との関係を解明した。この成果は、学際研究で定評のあるInterface誌に掲載された(Kitamura, et al., J. R. Soc. Interface, 2021)。 2.4つの保存則で細胞増殖を求める解析プラットフォームを、酵母の発酵過程へと展開した。マルチスケール解析を行い、培養時の輸送現象と定量的に比較することで、シミュレータの有効性を確認した。培養容器内にプラスチックごみを模擬した物体を混入させると、これにより増殖速度が増加することを示した。この成果は、査読付き雑誌論文として発表された(Srivastava, et al., Roy. Soc. Open Sci., 2021)。 3.大腸菌などの細菌が高密で集積した場合の、物質輸送解析を行った。さまざまな分子量の物質の輸送を再現できるよう、境界要素法とブラウン動力学を組み合わせた手法を独自に開発した。この成果は、2編の国際会議論文、および国内学会論文として発表された。 4.また、線虫の腸壁への物質吸収を調べた論文を現在投稿中である。
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