研究課題/領域番号 |
20K21880
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 理貴 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (00549529)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 機能性核酸 / RNAアプタマー / siRNA / ウイルス / VLP |
研究実績の概要 |
本研究は、異なる特性を持つ2種の機能性核酸分子であるsmall interfering RNA (siRNA) とRNAアプタマーとの複合分子によって、ウイルス感染症に対する新たな感染阻害剤「多重特異性多機能キメラ核酸」の開発を目的とする。具体的には、核酸抗体とも呼ばれるRNAアプタマーによって、標的ウイルスに特異的に結合し中和活性を持ち感染阻害効果を発揮する分子の開発、siRNAによってウイルスゲノムやその転写産物を特異的かつ高効率に分解する分子の開発、その2つの機能を併せ持つ複合キメラ分子の開発とその有効性評価研究である。これにより、アプタマーの中和活性によって感染阻害能力を持ちながら、中和に必要な相当数の分子が結合できなかった際にウイルスと供に細胞内に移行しウイルスゲノムを分解する2つの機能を備えたキメラ核酸の創製を目指す。 研究を開始した本年度は、計画通り、独自のアプタマー創製技術(VLP-SELEX法)によってデングウイルスをモデル標的として候補アプタマーの取得と配列の最適化を実施し、目的とする分子を得ることができた。また、ルシフェラーゼレポーターを用いた細胞アッセイ系によって、デングウイルスのRNAゲノム配列を効率よく分解するsiRNAの設計とその評価を実施し、最適なsiRNA配列を見つけることができた。更に、エンドソームエスケープを目的とした既報のペプチド分子を介して両分子を結合したキメラ核酸を設計し、その有効性を評価した。複合分子のRNAi効果を評価するため、敢えて中和活性の無いアプタマーと最適化されたsiRNA配列の複合体を合成し、ウイルス様粒子とヒト培養細胞を用いたモデル評価系において複合キメラ分子の活性(RNAi効果)を検証した結果、標的RNA(ウイルス配列を含むレポーターRNA)の分解を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の通り、目的とするキメラ核酸の開発に不可欠となる中和活性を持つアプタマーの開発およびウイルスゲノムRNAを標的としたsiRNAの設計とその分解能の評価が完了した。また、それらのキメラ分子を設計し、標的RNAの分解能を有することまで確認できた。本年度は、計画していた全ての研究内容について、変更なく実施・完了できたため、順調に進捗したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も基本的には計画通り、これまでに確立した中和活性やRNAi活性を評価する各種評価系を用いて、ウイルス感染を阻害するキメラ核酸を複数設計し最適化を実施する。最適化されたキメラ核酸に対しては、生ウイルスを用いた実証実験を実施できるよう準備を進める予定である。
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