研究課題/領域番号 |
20K21888
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田畑 泰彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (50211371)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 3次元細胞成形体 / 枝分かれハイドロゲル繊維 / バイオマテリアル / 徐放化細胞増殖因子 / 細胞機能向上 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、3次元細胞成形体の細胞の生存と機能を高めるための細胞と組織工学バイオマテリアルとの組み合わせ技術を開発することである。一般に、3次元細胞集合体では内部の栄養・酸素供給が十分ではなく、細胞が死滅、あるいは機能低下が問題となっている。本研究ではこの問題を解決するために、細胞を生体吸収性で細胞親和性のゼラチンからなる分枝ハイドロゲル繊維との共培養を行い、繊維が均一に分散した3次元細胞成形体を調製する。この技術によって、分枝ハイドロゲル繊維を活用した体内の血管網構造を模倣を実現する。さらに、ハイドロゲル内に細胞増因子を含浸させ、成形体内部から因子を作用させるとともに、培養装置との組み合わせによって生理学的に細胞機能を増強する。 種々の作製条件を工夫することで、ゼラチンハイドロゲル分枝繊維を作製、それを熱脱水処理によって架橋した。架橋の程度によって繊維の分解性を制御することができた。次に、マウス細胞株の3T3E1細胞を分枝ゼラチンハイドロゲル繊維とともに、細胞非接着性培養血上で培養した。その結果、期待通りに、繊維を均一に含む3次元細胞成形体を調製することができた。分枝ゼラチンハイドロゲル繊維を含まない3次元細胞成形体では、培養時間とともに成形体内部の細胞の機能が低下、細胞の死滅が認められた。これに対して、分枝ゼラチンハイドロゲル繊維を含ませた3次元細胞成形体内部では細胞の増殖が見られ、細胞のミトコンドリア活性の上昇が確認された。3次元細胞成形体培養時での分枝ゼラチンハイドロゲル繊維の添加量が3次元細胞成形体内部での繊維分布状態に影響を与えることがわかった。また、この分布状態により細胞のミトコンドリア活性の違いが見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響により、数カ月の研究活動の停止、遅延する時期があった。これによりゼラチンハイドロゲル分枝繊維の作製、およびそれに伴う細胞培養実験の計画が予定より若干遅れた。令和2年度後半には、研究ペースも通常近くに戻ったため、研究を進めた。本研究の目的である、分枝ゼラチンハイドロゲル繊維を入れることで3次元細胞成形体の細胞の生存と機能の改善を示すことはできた。これは予定通りである。しかし、細胞機能の評価について、計画していた内容の全てを実施することができなかった。総合的には、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの影響により、研究計画に記載した内容の全てを行うことができなかった。令和3年度は、令和2年度に実施できなかった計画も組み入れ、効率的に研究を推進する予定である。加えて、コロナ禍の影響により、学会自体のキャンセルおよび延期があり、学会での発表機会が少なくなった。令和3年度には、本研究成果の発表を行いたいと考えている。
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