siRNAは医薬品としての提供が期待されるが、その実現には標的細胞特異的なsiRNA送達法が必要である。標的細胞への送達に際しては、その細胞が存在する標的組織への送達、さらには標的細胞への送達の二段階が必要である。これまでに開発されてきたデリバリー法は、標的細胞へのリガンドを利用し、標的組織ならびに標的細胞へのデリバリーを試みるものである。このアプローチの標的指向性はリガンド特異性のみに依存するため、標的組織・細胞特異的な送達が困難な場合も存在する。そこで本研究では、siRNAを搭載した標的細胞指向性エキソソームを産生する細胞を構築し、さらにこの産生細胞に標的組織移行性を賦与することによる、組織―細胞の二段階の標的指向化に基づく革新的なsiRNA送達法の開発を目指すこととした。 モデルエキソソーム産生細胞として、HEK293細胞を選択し、siRNA搭載エキソソーム産生細胞の構築について検討を行った。前年度までの検討において、RNA結合タンパク質を利用してエキソソームへのRNA搭載が可能であることを明らかとしたが、そのRNA搭載量には限界があった。そこでエキソソームへのRNA搭載の効率化を目的として、核酸ナノテクノロジー技術を利用して、siRNAからなるRNA高次構造体を形成させ、これのエキソソーム搭載について試みた。その結果、高次構造化させることによって、siRNAとしての活性が大幅に低下したことから、このアプローチは利用不可能であることを見出した。
|